「サステナビリティ経営のトップカンパニーを目指す」。これはKDDIが公開した「KDDIサステナビリティ総合レポート2022」に掲載されている、同社サステナビリティ経営のキーパーソンである最勝寺奈苗氏の言葉だ。ESGやSDGsへの対応、人的資本開示等々、企業と社会の関係への視線はますます厳しくなってきている。中でも環境や社会・経済に配慮した事業活動を通じて企業価値の向上を目指す「サステナビリティ経営」は、今の企業関心事の中心とも言える。多くの企業がサステナビリティ経営を進める中、トップを目指す同社の目指すもの、課題などを聞いた。
KDDIにおけるサステナビリティ経営の概要と位置付け
KDDIは、変化に対応しながら、ありたいレジリエントな未来社会を実現するため、「KDDI VISION 2030:つなぐチカラを進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」を掲げ、新たな「中期経営戦略」を策定し、昨年発表。そして中期経営戦略ではサステナビリティ経営を軸に据えている。こうした戦略や経営方針を推進するために、2022年4月「サステナビリティ経営推進本部」を従来の総務部サステナビリティ推進室からコーポレート内の1つの本部に格上げし、より強力に推進すると発表した。最勝寺氏は本部長として、同社のサステナビリティの要を担っている(2023年3月時点)。
――KDDIにとって、サステナビリティ経営とはどのようなものでしょうか。
最勝寺奈苗氏(以下敬称略) サステナビリティ経営を新たに経営戦略の軸に位置付けたからには、従来の経済価値だけでなく、社会価値や環境価値を向上させて、社会と企業の持続的成長を実現させたい。そして社会の成長が、次のわれわれの事業戦略に生かされ、再び社会に還元される好循環を目指しています。
当社は、昨年度、サステナビリティ推進室から発展・強化し、サステナビリティ経営推進本部を新設しました。ここで特筆したいのがIR部を経営管理本部から移管したことです。サステナビリティ経営の取り組みは、自己満足では駄目で、KDDIグループとしての取り組みを社外のステークホルダーへ正しく伝える開示がとても重要です。そのため、対外開示に感度が高いIR部と一緒になり、サステナビリティ経営推進本部の活動を活性化させています。
――ビジョンでもある「つなぐチカラ」との関係を教えてください。
最勝寺氏 KDDIの主たる事業は通信事業ですので、通信をセンターにあらゆる産業や生活シーンに通信を溶け込ませることで新たな価値が生まれる時代を目指します。コアとなる事業が明確でないと、われわれの存在意義そのものが薄れてしまいますので、通信を核とした新たなサービスによって社会の持続的成長につなげていきたいと考えています。
残念ながら、昨年、当社は大きな通信障害を起こしてしまいました。これによって、通信という社会インフラが社会に与える影響の大きさを再認識しました。今は通信を活用したサービスやデータ量が格段に増えています。法人利用としての携帯電話の利用も増え、IoTも多様なところに組み込まれています。それらの機能が止まってしまった時の影響は、かつてとは規模が格段に異なります。全社を挙げて再発防止を徹底するとともに、お客さまに安心してご利用いただける通信ネットワークを提供していくことの責務と誇りを全社員で共有しました。
当社は、事業戦略であるサテライトグロース戦略により、本格化を迎える5Gをセンターに置き、通信事業の進化と通信を核とした注力領域を拡大していきます。特に5つの注力領域として、DX・金融・エネルギー・LX(ライフトランスフォーメーション)、そして地域共創を定義し、通信とのシナジーを発揮することでこれらの成長を加速させていきます。