DXを加速させる次のステップ

「水と油」である「アジャイルとオフショア」の融合に挑む

JBpress/2020.3.3

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 DXへの期待が増大する中、ITを軸とするデジタル技術による開発プロジェクトは多様な業界で頻発している。当然のことながらハイスピードとローコストが求められるわけだが、ハイスピードをもたらすアジャイル開発と、ローコストを実現するオフショアでの開発は「水と油」だと思われてきた。

 だがKDDIは、その水と油の融合というチャレンジに早い時期から取り組み、ついに「いける」という勝算を得たという。そこで、3人の担当者に苦難の道を振り返ってもらいながら、今後への期待値の大きさを語ってもらった。

2014年に早くもスタートした挑戦。しかし当初は苦労の連続

「アジャイル(迅速)」は今やあらゆるビジネスの局面で鍵を握るキーワードとして浸透しているが、そもそもはITプロジェクトにおける新たな開発手法を示す言葉だった。

 開発プロセスを縦割りに分解して役割を細分化し、担当エンジニアはおのおのの役目だけに集中してきたのが従来のウォーターフォール型開発。要件定義から開発着手までに掛かる時間の長さや、役割分担の代償として要員の肥大化を招く点など、数々の問題点が指摘される中で、それらを解決する手法として一躍注目を集めたのがアジャイル開発だった。

 少人数のスモールチームが大部分のプロセスを一気通貫で担い、迅速なスモールスタートの後、改善を繰り返していく手法によって、時代が求めるスピードと臨機応変な柔軟性を持って進めていけるのがアジャイル開発の大きな利点。

 試行錯誤を余儀なくされるDX関連の取り組みにおいても、その優位性は高く評価され、今やメジャーな開発手法として定着しようとしている。その反面、緻密なコミュニケーションによる機動力が求められることから「オフショアでは無理」と今でも誰もが決め込んでいる。

木暮圭一氏(以下、木暮氏):まさに水と油です。当社は国内でまだ「アジャイル」という概念が一般化していなかった時期からアジャイル開発の可能性を追求し、2013年には本格稼働を開始。2016年にはアジャイル開発センターを立ち上げ、当社が得たノウハウを外部企業のお客さまにも提供するようになったのですが、これを海外のオフショアで展開できるかといったら、「それはあまりにも難しいだろう」という考えの方が圧倒的に多かったんです。

KDDI株式会社
プラットフォーム開発本部 アジャイル開発センター長
木暮圭一氏

佐々木徹氏(以下、佐々木氏):2013年当時は当社でも有志5名で開始したアジャイル開発でしたが、トライ&エラーの結果、開発期間も費用も従来の約3分の1まで縮小することに成功したことから、今やアジャイルの手法の1つであるスクラム開発に20チーム200名が携わっているほどです。ただ、ここで重要な鍵を握ってくるのがスモールチームを支える緻密なコミュニケーションと、それによって実現する素早い対応力。オフショアにいる海外のエンジニアにこれを託したとしても、次々に問題が発生することは誰の目にも明らかでした。
 

KDDI株式会社
プラットフォーム開発本部 アジャイル開発センター アジャイル開発3グループ マネージャー
佐々木徹氏

田原裕宣氏(以下、田原氏):でもその一方で、国内のSE人材不足は深刻です。開発コストを抑えたい、というニーズの方は増大する一方ですし、今後DXが進展すれば開発プロジェクトもまた急増していきます。そうなれば国内の人材だけで回していくことには現実味がありません。いつか誰かが挑戦しなければいけない課題が「アジャイル×オフショア」だったんです。

KDDI株式会社
プラットフォーム開発本部 アジャイル開発センター アジャイル開発3グループリーダー
田原裕宣氏