元気な企業には、どのような特徴、戦略、そしてビジネスモデルがあるのか。本連載では、特徴的なビジネスモデルを作り上げた7つの優れた企業事例を船井総合研究所が分析した『このビジネスモデルがすごい! 2』(船井総合研究所著/あさ出版)より、内容の一部を抜粋・再編集して紹介。コロナ禍をはじめとする環境変化に、各企業がどう対応し、ピンチをチャンスに変えて成長したかをひも解く。
第1~3回目は、「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」などの人気店を展開する物語コーポレーションの好調の秘密に迫る。
<連載ラインアップ>
■第1回 「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」の物語コーポレーションは、なぜ強いのか?(本稿)
■第2回 真似できそうで真似できない、物語コーポレーションのこだわりとは?
■第3回 物語コーポレーションの「業態改善会議」では、何が議論されているのか?
■第4回 「ゆるまないナット」のハードロック工業がこだわる商品力に頼らない営業戦略
■第5回 問い合わせ数が4倍に、ハードロック工業のデータ経営と営業DXの威力とは?
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業界の姿 ① 外食業界―コロナ禍からの回復はカテゴリーや戦略で明暗
足かけ4年にわたったコロナ禍の影響を最も受けた業界の一つが、外食産業だった。感染拡大の収束とともに、じわじわと市場は回復、全体としてはすでにコロナ前の水準にほぼ近づいてきている印象がある。
しかし、外食産業の中でも、回復しているカテゴリーとなかなか戻っていないカテゴリーがあるのが実情だ。
例えば、ファストフードはコロナ前を超える好調ぶりの企業が少なくない。日常食というジャンルに加え、コロナ禍で家の中で食べる機会がかなり増えたことが大きい。また、そうしたライフスタイルが定着。ドライブスルーやテイクアウトも好調だ。
一方で、繁華街立地の居酒屋など、企業やグループの宴会を収益の柱にしていたカテゴリーは、まだまだコロナ前には遠く及ばない状況にある。日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査2023年1月度 結果報告」では、19年1月対比で、売り上げが約50%という数字だった。遅くまで飲んだりしなくなったという人々のライフスタイルの変化の影響もあり、このカテゴリーはコロナ前のスケールに戻るのは厳しいのではないか、と予想されている。
ファストフードの中でも、テイクアウトに馴染まなかった麺類などは、まだ戻り切っていない。一方、居酒屋系ではあるが、生活商圏に近い駅前で商売を展開しているカテゴリーは、ほぼ戻ってきている。
マーケット全体としてはコロナ前の水準にほぼほぼ近づいてきているが、戻らないカテゴリーと逆に伸びているカテゴリーが、複雑に共存している状況にある。伸びているキーワードとしては、生活に近いマーケット、家の中の需要が取れているか、が挙げられる。
「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」など18業態、国内外654店舗を展開する(2023年5月末時点)物語コーポレーションは、厳しいコロナ禍の中でも、いち早く回復を見せた企業の1社である。
多くは郊外の大規模店舗だが、基本的に生活商圏。その商圏の中で一番の認知を作るという「地域一番店戦略」を取ってきたことが大きい。
郊外に大きな店舗を作ることで顧客の来店の心理的な安心感が高まり、集客力を高めることに成功した。また、幅広い客層にたくさんの利用動機で来てもらう多利用動機を強く意識してきた。
これまで培ってきた「選ばれる店作り」がコロナ禍でも発揮されたと言える。