今、外食産業に問われていることは、ずばり競合に勝つための「商品力の充実」と、人口減少に伴う「労働力の確保」だ。この2点の解決のために目下、多くの外食企業が取り組みを進めているが、今回はその中から「大阪王将」西五反田店(東京都品川区)の調理ロボットの実験導入の取り組みを紹介する。

「チャーハンとレバニラ炒めのセット」が提供しにくいという課題

 大阪王将は1969年9月に大阪・京橋で創業した中華料理店で、チェーンながら個人営業のいわゆる「街中華」の雰囲気を保ち、店舗展開をしている。現在はイートアンドホールディングスの事業会社である大阪王将(東京ヘッドオフィス/東京都品川区、代表取締役社長/植月剛)が運営をしており、全国に344店舗(2023年8月末時点)ある。

 その西五反田店で実験導入されたのが、調理ロボットの「I-Robo」だ。このロボットを開発したのはTechMagic(本社/東京都江東区、代表取締役社長/白木裕士)。食を取り巻く企業が直面する人手不足を解消し、生産性の高い社会を実現しようと2018年3月に設立された会社で、ハードウエアとソフトウエアを融合させたプロダクトの企画、設計、販売、保守を行っている。

 今回、大阪王将がI-Roboの実験導入を決めたのは、冒頭で記した「商品力の充実」が理由であった。大阪王将ではこれまでも調理ロボットの導入実験を行ってきたが、ロボットがつくった料理のクオリティに満足できなかった。そこで、「お客さまが食べたいと思っているものを、お待たせすることなく、満足していただけるクオリティで提供したい」との思いを実現すべく、TechMagicと大阪王将用にカスタマイズしたI-Roboの開発に取り組んできた。それがクオリティについて十分に満足できる仕組みとなったことから、今回、本格的な導入に向けた実験を行うことになった。

 大阪王将は街中華の雰囲気をもったチェーンだと記したが、その厨房は「焼場」「麺場」「揚場」の3つのポジションから構成されている。限られたスペースのキッチンで、なるべく速くスムーズに調理を行い、出来立ての料理を提供できるようにメニューが工夫されているが、それには欠点がある。

 お客としては、例えば「チャーハンとレバニラ炒めを一緒に食べたい」と思っていても、中華鍋で調理を行う料理を複数、タイミングを合わせて提供するのが難しいのだ。そこで、一般的な街中華では定食メニューを中華鍋で調理した出来立ての主菜(例えばレバニラ)に、ご飯とスープをセットにする形で提供する。これに1品加えるとしても、事前に揚げておいた唐揚げなどを付けることになる。I-Roboはこの欠点を克服するものなのだ。

「チャーハン」と「レバニラ炒め」のセットメニューはこれまで提供が困難だったが、I-Roboが可能にした