元気な企業には、どのような特徴、戦略、そしてビジネスモデルがあるのか。本連載では、特徴的なビジネスモデルを作り上げた7つの優れた企業事例を船井総合研究所が分析した『このビジネスモデルがすごい! 2』(船井総合研究所著/あさ出版)より、内容の一部を抜粋・再編集して紹介。コロナ禍をはじめとする環境変化に、各企業がどう対応し、ピンチをチャンスに変えて成長したかをひも解く。
第2回目は、物語コーポレーションの競合他社が模倣できない「地域一番店戦略」の秘密に迫る。
<連載ラインアップ>
■第1回 「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」の物語コーポレーションは、なぜ強いのか?
■第2回 真似できそうで真似できない、物語コーポレーションのこだわりとは?(本稿)
■第3回 物語コーポレーションの「業態改善会議」では、何が議論されているのか?
■第4回 「ゆるまないナット」のハードロック工業がこだわる商品力に頼らない営業戦略
■第5回 問い合わせ数が4倍に、ハードロック工業のデータ経営と営業DXの威力とは?
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ビジネスモデル ―― 大きな市場に差別化、 地域一番店戦略で入り、 シェアを狙う
物語コーポレーションのビジネスモデルのポイントは、焼肉、ラーメン、寿司といった大きな市場に差別化、「地域一番店戦略」を持って入っていき、シェアを取っていくことにある。ニッチを狙うのではなく、安定的に存在する市場をどう攻略していくか、だ。
差別化、「地域一番店戦略」については、一つの打ち手だけではなく合わせ技で考えていく。
もちろん立地にも一番主義を取りながら徹底的にこだわるが、お店の規模も他社よりも大きな店を作る。
ストアロイヤルティの観点からも何屋なのかをはっきりとわかる屋号をつける。大きい看板、ストリートサインにこだわる。また、名物商品を作る。丸源ラーメンは、塩ラーメンでも、とんこつラーメンでもない醤油ラーメンという大きな市場をメインターゲットにしているが、そこで「熟成醤油ラーメン肉そば」という名物商品を作っている。
価格も、ある程度は価格破壊を意識しつつも、ディスカウントというより、ボリュームゾーンを狙っていく。ハイエンドも基本的に狙わない。多利用動機を意識し、大衆の人たちが来店しやすい店作りを意識している。
接客サービスは、アナログの接点を重視する。「おせっかい」というキーワードを先に挙げているが、人らしいサービスを大事にしている。また、アプリを使った固定客化にも取り組んでいる。
船井総合研究所は、「差別化の8要素」として、立地、規模、ストアロイヤルティ、商品力、販促力、接客力、価格力、固定客化力を掲げているが、差別化はこうした要素の中の一つだけでは難しい。複数を組み合わせた合わせ技で差別化を図り、地域一番店を実現させているのが、この物語コーポレーションだ。
その中でも上位に来るのが立地であり、規模であり、ストアロイヤルティだが、物語コーポレーションのこだわりは、いずれも相当なレベルである。例えば、外装は、デザインもどんどんバージョンアップさせていく。いいデザインはどうしても模倣され、ブランドの同質化、陳腐化が進むからだ。「焼肉きんぐ」も初期の店は看板が黄色と赤色、そして安さを訴求したが、似たような看板が出てくると、どうしても埋もれてしまう。そこで、すでに「焼肉食べ放題」「3180円」という認知ができ上がったと判断し、新しい外装を作り上げていった。