本連載は、グローバルなヘッドハンティング会社で、100社以上、5000人を超える年収2000万円以上の人を見てきた人材の超プロフェッショナルが、その門外不出のノウハウを初めて体系化した書籍『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』(小野 壮彦著/フォレスト出版)から一部を抜粋・再編集してお届けする。
初回となる本稿では、人を見極めるためのフレームワーク(型)となる、人材を構成する「4つの階層」について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 人を構成する「4つの階層」を理解すれば、人を見る力は桁違いに向上する(今回)
■第2回 人の「ポテンシャル」を構成する4つの因子
■第3回 天才起業家たちを駆り立てる「エネルギーの源」の正体とは
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人は「4つの階層」で構成されている
人と会うとき、相手を見抜こうとするとき、ぼくらはどうすればよいのだろうか。どうやって「人を見る」という力を磨くのか。鍛えるのか。これまで述べてきたように、ほとんどの方は、この分野において、きちんと教育・トレーニングを受けていないはずだ。そのような場合、やみくもに動いても結果はついてこないだろう。そこで、まずはある程度の「型」を体に入れておくことが近道となる。
空手や剣道などの武術と似ているかもしれないが、最初に「フレームワーク(骨格、枠組みであり、構造)」を自分の中に取り込んでしまうのである。人を見るための思考の枠組みとなるフレームワークを持ってはじめて、なりゆき任せではない、意志を込めた試行錯誤が可能となり、習得が進むのである。
スポーツ経験者ならわかるだろう。筋肉トレーニングも、やみくもに回数をこなすだけでは効果が出ない。正しいフォームと適切な負荷で、どの部位の筋肉を動かすかを意識し、意志を込めたルーティンをコツコツとやり切ることがコツだ。日々のトレーニングにセンスは要らない。全くそれと同じだと考えていただきたい。
さて、ここからは、世界最先端のトップファームで磨かれてきた秘伝の知恵を初公開する。ひとつひとつ丁寧にみなさんに紹介していきたい。人を見るためのフレームワーク。それは次の通りだ。
いかがだろうか。人を見るにあたっては、人間を建築物のように、階層として捉えてみてほしい。イメージは地下深くにつくられた建物だ。地上1階が「経験・知識・スキル」、地下1階が「コンピテンシー」、地下2階が「ポテンシャル」、そしてもっとも最下層の地下3階が「ソース・オブ・エナジー」だ。
1階が表に出ていて、地下1階、地下2階、地下3階へと深く掘り下がっていく。そんな建物はなかなか世の中に存在しないと思うが、想像力を働かせていただきたい。ぼくのイメージはパリのルーブル博物館にある、ルーブル・ピラミッド。表は三面のガラスのピラミッドだが、実は地下には広大なスペースが広がっている。
もう少し近いイメージがないものか調べてみたら、メキシコの建築家エステバン・スアレス氏が2011年にデザインした、逆ピラミッド型の超深層ビル「アース・スクレイパー」というクレイジーなコンセプト・プランを発見した。地下65階建てはさすがにやりすぎだが、こういう逆さビルをイメージしていただけるとありがたい(図9)。
浅いほう、つまり地上に出ているものほど他人から見えやすく、わかりやすく、そして変わりやすい。一方、地下に潜れば潜るほど見えにくく、わかりにくく、変わりにくい。
ちなみに「人は変われるのか?」という、非常に大きな命題があるが、変わりやすい部分と、変わりにくい部分の両方があるというのが現時点での識者のコンセンサスだ。こうした建造物のように人の内面を捉えると、人を見ることが非常に楽になる。論理的に整理しやすいからだ。
このフレームワークを覚え、意識を込めた試行錯誤を経られれば、人間の内面が設計図のように目の前に浮かび上がるようになる。興味をそそられただろうか。では、順を追って各階層に“ダイブ・イン”していこう。