
希代のマーケターとしてその名を知られる刀CEOの森岡毅氏。ユー・エス・ジェイから独立して「刀の森岡」となってからも、その有言実行の力にはますます磨きがかかっている。2024年12月に『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』(日経BP)を出版した日経ビジネス記者の中山玲子氏に、刀が手掛けた製粉大手ニップンの変革や、2025年に刀がオープンさせる沖縄のテーマパーク「ジャングリア」について聞いた。
全国小売店の担当者を驚かせたニップンの新商品
──著書『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』では、製粉大手のニップン(旧日本製粉)が刀の支援を受けて挑んだパスタ事業の変革について触れています。そもそもニップンはどのような目的で刀との協業を始めたのでしょうか。
中山玲子氏(以下敬称略) ニップンは明治期の1896年に設立され、130年近い歴史を持ちます。こうした老舗企業には、JTC(ジャパン・トラディショナル・カンパニー=伝統的な日本企業)と呼ばれるように、積み重ねた歴史が足かせとなり、変革に踏み切れないケースも少なくありません。
ニップンも社長の前鶴俊哉氏が「閉塞(へいそく)感が漂い、結果につながらない状況が何十年もあった」と話すように、伸びしろであるはずの食品事業では苦戦を強いられてきました。そうした状況を打破するために「組織としてマーケティングを取得すべき」という結論に至り、2022年10月、USJを再建に導いた森岡氏率いる刀との協業を開始しました。
そして、ニップンと刀が開発から製造、販売までを共に手掛けた乾燥パスタ「オーマイプレミアム もちっとおいしいスパゲッティ」は2024年2月の発売開始後、売上高が前年同月比65%増(2023年3月から2024年8月まで)を記録し、ニップン社員や全国小売店の担当者を驚かせました。