「ピープルズビジネス」と呼ばれる保険事業。昔は紙と鉛筆の商売ともいわれていたが、ペーパーレスが進んで、残ったものは人だけという状態になった。だからこそ重要になる、人的資本経営。東京海上ホールディングスではどのように人材を育て、評価し、多様な人材が力を合わせて共通の目的に向かって進むための取り組みをしているのか。人材戦略のリーダーであるグループCHROに聞いた。
「人材版伊藤レポート」の公表以来、人的資本経営に取り組む企業が増えています。しかし一方で、そこに「正解」はありません。情報開示の義務化が始まる中、多くの企業が自社らしい人的資本経営の在り方を模索しています。本特集では人的資本経営に取り組む先進企業の事例や有識者による解説などを通し、真に価値のある人的資本経営を実現するための方法論に迫ります。
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保険事業には人にしかできないことが多い
――人材の重要性は、多くの業種、企業が標榜していますが、東京海上グループが人的資本経営に特に力を入れる理由に何か、違いはあるのでしょうか。
北澤健一氏(以下敬称略) 保険事業は「ピープルズビジネス」と呼ばれています。昔は紙と鉛筆の商売ともいわれていましたが、ペーパーレスが進んで、残ったものは人だけという状態です。人が紡ぐ信頼、信用が本当に重要であり、人的資本、D&Iと言われる前から当社のポリシーとして持っていました。
保険という商品は、手に取れる形あるものではありません。お客さまにとって最適な補償、サービスを考え出せるのは人しかいないということです。また、事故が起こったときにお客さまに寄り添ってサポートすることも、人にしかできないと思っています。
そういうビジネスの特性を踏まえても、人が大切だということです。これまでと変わらず、人への投資は積極的に行っていきたいと考えています。当社で働いて誇りを持ってもらうためにも、高処遇を実現したいと経営として考えています。
ただ、トップ水準の処遇を約束するからには、社員の側にも責任の重さ、広さを理解してもらう必要があります。プロとしての専門性を高めるために、自己研さんもしてもらわなければいけません。
その上で、個としての成長、組織・同僚に対する貢献支援などを行い、トータルにトップ水準の人材でいていただく必要があります。それを期待してさまざまな仕組みやサポート策を考えていきたいと思っています。