100社以上、5000人を超える年収2000万円以上の人を見てきた人材の超プロフェッショナルが、その門外不出のノウハウを初めて体系化した書籍『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』(小野 壮彦著/フォレスト出版)から一部を抜粋・再編集してお届けしている本連載。
2回目となる本稿では、現在、人を選ぶ際の主流となっている「ポテンシャル・モデル」を考察する。私たちが人を選ぶとき、普段何となく使っているこの「ポテンシャル」という概念を分解すると、4つの因子に分けられる。それらは、本人からすると無意識で、時に無自覚に、自然と湧きおこる「エネルギー(熱量)」のようなものだという。
<連載ラインアップ>
■第1回 人を構成する「4つの階層」を理解すれば、人を見る力は桁違いに向上する
■第2回 人の「ポテンシャル」を構成する4つの因子(今回)
■第3回 天才起業家たちを駆り立てる「エネルギーの源」の正体とは
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ミステリアスな地下2階 人間のポテンシャル
次からはいよいよ、本書の肝となる深層の世界に足を踏み入れていく。
人の能力のさらに奥には、何があるのだろうか。ほとんどの人にとっては、未知の世界だろう。序章で述べた「F1マシン技術の民生利用」のなんたるかを、ここで実感していただきたい。
■ コップに注がれる水
人は、「変わりやすい部分」と、「変わりにくい部分」があると先に述べた。地上階のエクスペリエンス(経験)・知識・スキルや、地下1階のコンピテンシー(行動特性)は、どちらかというと、物心がついてから、学習と体験を通じて形作られるもので、また、変化していくものである。
いわばコップに注がれる水だ。
では、コップそのものについてはどうだろうか? それが地下2階の「器=ポテンシャル」である。
人はまさにコップのように、それぞれ大きさが違うし、形も、触り心地も違う。地下1階や地上部分で注がれるものは、その器がある上で成立しているものだと言っていい。
この器がどれだけの容積を持っているのか。その中に注がれたものが、どのくらいの量か。この二つがわかれば、さらに加えられる量がわかる。これを世の中では「伸びしろ」と呼ぶ。
つまり、コップの大きさがその人の「器」であり、注がれる水が「経験・知識・スキル」「コンピテンシー」だ。そして、その差分のさらに注ぐことができる水の量が、「伸びしろ」というわけだ。
■「ポテンシャル・モデル時代」の幕開け
人の「伸びしろ」について、エゴンゼンダーが、ハーバード大学などとともに、長年科学的にリサーチし、2014年に初めて世界に公表したコンセプト。それがこれから解説する「器」を示す「ポテンシャル・モデル」だ。
これは広義のHR(人事)業界において、ちょっとした革命だったと言っていいだろう。彼らは過去(トラックレコードなど)ばかりを面接で見ていた世の中に対して、未来(伸びしろ)を読むべきだという、コペルニクス的転回の必要性を指摘したのだ。