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 小さなガレージで生まれたパソコンメーカーのアップルを世界的ブランドに育てたスティーブ・ジョブズ。1985年に社内対立で退職したあとNeXTやピクサーを成功に導き、1997年にアップルへ戻るとiMac、iPod、iPhoneなど革新的な製品を次々と世に送り出した。本連載では『アップルはジョブズの「いたずら」から始まった』(井口耕二著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集し、周囲も驚く強烈な個性と奇抜な発想、揺るぎない情熱で世界を変えていったイノベーターの実像に迫る。

 今回は、世界のビジネス界に影響を与えたジョブズ流のプレゼンと、“評伝嫌い”のジョブズが自分から執筆を依頼した公式評伝の誕生経緯を紹介する。

アップルはジョブズの「いたずら」から始まった』(日経BP 日本経済新聞出版)

■ ジョブズのプレゼン手法を身につける

 ジョブズの登場でプレゼンは大きく変わったという。あれを見て、その効果を実感すれば、自分も同じようにしたいと思うのが当然だろう。

 だが形だけまねてもイタいプレゼンになってしまう。特に控えめを美徳とする傾向の強い日本でへたにやると悲惨なことになりそうだ。

 じゃあ、あきらめるしかないのか。大丈夫だ。悲観することはない。

 形ではなく、その考え方、構成の仕方など、エッセンスを分析し、まねればいい。いや、分析はプロがしてくれているので、それを学んで身につければいい。

 そんなうまい話が現実となるのが『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(日経BP)だ。コミュニケーションコーチのカーマイン・ガロがジョブズのプレゼンを細かく分析し、練習によって身につけられる要素に分解してくれている。効果は保証付き。ガロがさまざまな人に教え、効果が確認されているからだ。

 この本を訳したあと、一部テクニックを活用してみた。私がやるプレゼンは翻訳業界向けセミナーなのでどうしても文字が増えがち、説明ばかりになりがちだ。正直なところ半信半疑だったのだが、意外なほど使える。聞いた人の評判も上々だ。