目下、日本の大企業が最も注力している経営アジェンダといえば、「サステナビリティ」だろう。先行する欧州企業に遅ればせながらも一気呵成にキャッチアップを図っている日本企業も多いのではないだろうか。その流れの中で、サステナビリティ経営をモニタリング(監督)する仕組みである「サステナビリティ・ガバナンス」の重要性が高まっている。本連載では6回(毎週金曜日更新)にわたり、コンサルタントとして多くの大企業のサステナビリティ経営にアドバイスしてきた内ヶ﨑 茂氏(HRガバナンス・リーダーズ代表取締役CEO)が、「日本版サステナビリティ・ガバナンス」構築の必要性と考え方を解説する。

(*)本稿は『サステナビリティ・ガバナンス改革』(内ヶ﨑 茂、川本 裕子、渋谷 高弘著/日本経済新聞出版)から一部(「第8章 日本版サステナビリティ・ガバナンスの構築」)を抜粋・再編集したものです。

<連載ラインアップ>※毎週金曜日に公開
■第1回 サステナビリティ経営をモニタリングする仕組みが求められている(本稿)
第2回 サステナビリティ委員会の設置が今の日本には必要
第3回 モニタリング型のコーポレートガバナンスの構築
第4回 ダイバーシティの重要性(1)従業員のダイバーシティ
第5回 ダイバーシティの重要性(2)取締役の属性・年齢のダイバーシティ
第6回 ダイバーシティの重要性(3)取締役のスキル・専門性のダイバーシティ

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サステナビリティ経営を
モニタリングする仕組みが求められている

「雇用を創出し、排出を削減し、世界的な気温上昇を1.5度に抑えることを追求するグリーン革命を支援することにより、我々の地球を守る。我々は、2030年までの20年間で我々全体の排出を半分に抑え、2025年までに気候資金を増加および改善させつつ、遅くとも2050年までのネット・ゼロにコミットするとともに、2030年までに陸地および海洋の少なくとも30%を保全又は保護することにコミットする。我々は、将来の世代のために地球を守るという我々の責務を認識する。」

 2021年6月のG7サミット(主要7カ国首脳会議)における、共同宣言からの抜粋である。米国において、パリ協定を離脱するなど温暖化防止のための政策に否定的なトランプ大統領が退き、バイデン大統領が就任したことで、日本を含む主要7カ国はグリーン経済の構築、そして地球・社会を守るという責務に向けて一枚岩になったと考えられる。

 地球・社会が抱える問題は、温暖化だけではない。ジェンダーや人種に基づく差別、格差社会の克服、人権の問題など多岐にわたる。各国政府が指針を示し、解決できる問題もあるが、私たちの生活は企業に支えられる部分も大きい。

 たとえば、米国アップルのスマートフォン「iPhone」は世界中で使われ、ダノンのミネラルウォーター「エビアン」は世界中で飲まれている。iPhoneは数千個の部品から製造されており、世界のサプライヤーが環境や社会に配慮したものづくりにこだわり、災害時の緊急連絡など社会貢献的な活用への期待も高まっている。エビアンは約200年以上も守り抜かれたフレンチアルプスで育まれた自然の恵みであり、地域住民はこの清らかな水を将来に残すため様々な環境保護活動に取り組んでいる。

 それらを提供する企業の活動が、環境に優しく人権にも配慮するなどのサステナブルなものでないと、地球・社会を守ることは難しくなる。企業には、社会的な貢献や責任を果たしながら、持続的に成長を果たすことが求められているといえよう。それこそが、「サステナビリティ経営(持続可能な経営)」であると考える。