* 本コンテンツは以下講演の【講演動画】と【全文採録記事】で構成しています *
第2回 取締役イノベーション
特別講演1「企業経営とガバナンス(前編)」(今回)
特別講演1「企業経営とガバナンス(後編)」
開催日:2023年2月17日(金)
主催:JBpress/Japan Innovation Review
経営においては、事業環境変化に適切に対応することが求められます。自身の経営者としての経験を基に、事業環境の変化をどのように捉え、対応すべきかについて解説するのが、2003年から2010年まで、旭化成の代表取締役社長を務め、現在は蛭田経営研究所の代表である蛭田史郎氏です。
旭化成は1920年代に合成化学や化学繊維事業からスタートし、住宅・建材やエレクトロニクス、医薬・医療など、積極的に事業の多角化を進めてきた歴史があります。しかしながら、ポートフォリオの転換により日本経済の発展や社会環境の変化に対応する一方で、自身の社長就任時には同社にはさまざまな課題があったと蛭田氏は振り返ります。
2003年の社長就任にあたり、戦略立案のために過去50年間の会社の経営指標を分析したという蛭田氏は、当時の旭化成は事業の多角化にもかかわらず売上高が伸びておらず、特別損失が年々増えている状態であったといいます。そして、日本経済全体が高い成長を見せていた1960年から1975年頃までは同社の経営も順調であったものの、それ以降に成長が止まった一因として、経済構造全体の変化に対応した適切な経営ができていなかった可能性があると指摘します。
蛭田氏によれば、1960年から1970年頃までは、市場は「ものをつくれば売れる」という供給律速のマーケットでした。ところが、オイルショックの頃から、市場要請に応える商品が求められる需要律速のマーケットに変化。さらに、社会のニーズを創り出すことが求められる需要創造が必要な市場へと変化する中で、各時代のイノベーションに期待されるものも大きく変わってきたといいます。
当時の旭化成においては、こうした変化に対して必ずしも適切な対応ができていなかったという認識のもと、蛭田氏は新しい事業戦略を立案、実行。そして、事業分社化やそれに伴う分社ガバナンスの変更、既存事業の構造改革などにより、売上高や営業利益、キャッシュフロー改善において大きな成果が得られたといいます。
社長としてさまざまな経営改革を実現した蛭田氏。社長就任以前からさまざまな事業において環境変化に合わせた戦略変更を提案、実現してきた経験を語り、技術導入での工場建設やホール素子の事業化といった具体例を挙げながら、事業環境変化に対応した経営の大切さを伝えます。
事業環境の変化を捉え企業価値を最大化するために、経営者はどのような視点を持つべきか。これからの時代に求められる経営のあり方とはどのようなものか。旭化成における具体的な事例とともに、蛭田氏が解説します。
【目次】
- 旭化成のポートフォリオ転換とその背景
- 社長就任時の課題認識、50年の経営を振り返って見えてきたもの
- 「供給律速」から「需要律速」、「需要創造」へと変化する市場
- 産業構造を転換しながら発展をしていくという視点
- 経営改革の取り組みと成果(分社化/分社ガバナンスの変更/既存事業の構造改革)
- 事業戦略の立案と実行、その思考の根源。社長就任前の実行事例(ホール素子の事業化/コンパウンド事業の強化/工場統合/タイヤコードの国際展開)
- 経営に欠かせない認識(経営にとって最も大切なこと/事業環境変化と経営戦略)
- 企業価値を最大化する「風に乗り風を起こす経営」