2021年4月に、リース業界大手の三菱UFJリースと日立キャピタルの2社が合併して誕生した三菱HCキャピタル。2年間の統合プロセス(PMI)を2023年3月に完了し、5月には新会社として初の中期経営計画を発表した。「“リース会社を超える何か”にならなければ未来はない」と強い口調で語るのは、経営企画本部長の佐藤晴彦氏だ。ビジネスモデルの「進化」と「積層化」による変革へ挑戦するとし、その鍵を握るのは「水素」「EV」「物流」「脱炭素」の4分野だという。デジタル戦略企画部長の富士本州勇氏にも加わってもらい、その真意を聞いた。
今後10年を見据えた事業ポートフォリオ変革に着手
――リース大手2社の統合により、業界内の存在感が増しました。しかし経営統合が完了した矢先に出された中期経営計画では、事業構造を根本的に変える方向性を表明しています。その狙いは何でしょうか。
佐藤晴彦氏(以下敬称略) 統合してから2年間、PMI(経営統合プロセス)と並行して、新会社の中期経営計画策定に着手しました。この中計に込めた思いは、実は統合前から両社共通の課題として持っていたものです。
それは、「従来の延長線上に未来はない」という認識です。リース市場は特に国内で市場の伸びが鈍化しており、競争も激化しています。両社ともに、統合以前から「リース会社を超える何か」にならなければいけないという問題意識がありました。新会社の名前を「三菱HCキャピタル」として、リースという言葉を入れなかったのも、リース会社を超える決意を示すためです。
統合後すぐに始めたのが、当社の経営の基本方針である「アセットの潜在力を最大限引き出す」ことで、社会的な価値を創出し、成長していくというビジョンを基本とした「10年後になりたい姿」の議論です。リース会社であるという前提すら取り去り、白紙の状態で議論を深めました。
当社は「アセットカンパニー」であることを再認識し、この強みを経営に生かしていくことが重要だと考えています。ここでいうアセットとは、有形の資産項目だけではありません。データやノウハウを含めた無形のアセットの価値を最大化することが狙いです。従来のリース事業に価値を加え、新しい事業を育てていくために、事業ポートフォリオそのものを構造改革する「CX(コーポレートトランスフォーメーション)」を進めていきます。
改革を進めるに当たり、まず、当社としてのあるべき価値創造プロセスを改めて考えました。当社が持っている非財務資本を定義し、活用していくには何が必要かを議論し、導き出されたのが、「事業・オペレーションノウハウの積み上げ」「アセット基盤の転換」「ネットワークの多様化・深化」という3つの要点です。これを経営戦略の中心に据えて、具体的な事業モデルを考えています。