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国内3大損保の一角、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングスは、デジタル技術を活用しながら、万一の補償・保障だけでなく、リスクの発現を防ぎ、迅速な回復を支援する「CSV(共通価値の創造)×DX」戦略を展開している。進化を続けるテクノロジーをいかに取り入れ、蓄積したデータをどのように活用しているのか。MS&ADグループの執行役員でグループCDO(最高デジタル責任者)を務める一本木真史氏に、「CSV×DX」戦略の現在地と未来像について聞いた。(インタビュー・構成/指田昌夫、文/河合起季)
ライフスタイルの変化、規制緩和、フィンテックの台頭など、金融機関の経営環境は激変の一途。今やDXによる変革は待ったなしです。金融業界におけるDXキーパーソンへのインタビューにより、DX戦略の全体像から、データ活用、CX、カルチャー変革、デジタル人材育成まで、金融DXの最新の事例を取り上げます。
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利便性の向上と提供価値の高度化に取り組む
――三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保を中核とするMS&ADグループではDXの主目的に「CSV」「顧客体験の向上」を掲げています。はじめに、DX戦略の基本方針についてお聞かせください。
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1987年、旧住友海上火災保険に入社。 商品部門、営業部門等でキャリアを積み、2018年に執行役員、2020年にMS&ADホールディングス 執行役員 グループCIO・CISO、ならびに三井住友海上火災保険 取締役 常務執行役員に就任。2021年4月にグループCDOも兼任。2022年6月からグループCDO。
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座右の銘・好きな言葉:「好奇心」
お薦めの書籍:『アメリカの心―全米を動かした75のメッセージ』(ユナイテッド・テクノロジーズ・コーポレーション著、学生社刊)
一本木 真史氏(以下敬称略) デジタル技術を活用しながら、お客様や社会の課題を解決し、顧客体験の向上を含むCSVを実現する「CSV×DX」がグループの統一されたDX戦略のコンセプトです。「CSV×DX」を軸に商品・サービスや販売チャネル・販売手法の変革、新たなビジネスの創造、デジタル人材の育成などに取り組んでいます。
ともすると、新しいデジタル技術を実装することがDXの目的になりがちですが、デジタルはあくまでもツール。目的と手段を取り違えないように、「CSV×DX」を常に意識しておくことが重要です。そのため、日頃のコミュニケーションを通し、私たちの目的は何か、何を解決すべきなのかを常に問い続けています。こうした啓発活動もCDOの大きな役割の一つだと思っています。
――顧客体験の価値創造という点ではどのような取り組みを行っていますか。
一本木 2つの方向性に大きく分けられます。1つは利便性の向上です。わかりやすい例としては、三井住友海上のインターネットサービス「ご契約者さま専用ページ」が挙げられます。これは、契約内容の確認や引っ越し時の住所変更、自動車保険の契約内容の変更受付をはじめ、自動車事故が起きたときの連絡などが24時間365日行えるプラットフォームです。事故の連絡に際しては、自動車保険の担当者とWeb上でメッセージをやり取りでき、同時に画像・ドラレコ動画を送信することも可能です。お客様にとっては事故の解決がどのように進んでいるかは非常に気になるところですが、その進捗状況や支払内容もWeb上で確認できます。
もう1つは、お客様に提供する価値の高度化です。こちらのほうが体験価値は大きいと思います。代表的な例としては、コネクティッドカーによるテレマティクス技術を用いた「タフ・つながるクルマの保険」があります。あいおいニッセイ同和損保が160万人のお客様に提供しています。安全運転で保険料が割引になるほか、アプリを通じて1回の運転および1カ月ごとに安全運転スコアが表示された運転診断レポートを提供し、運転技術と安全性の向上という価値を創造しています。
三井住友海上では、「見守るクルマの保険」の専用ドライブレコーダーの映像から事故状況を自動生成するシステム「Ai’s(アイズ)」を提供しています。衝撃を検知するとドライブレコーダーが反応し、映像を自動送信。AIが映像やクルマの速度、位置情報から事故状況を分析し、お客様の事故状況の分析結果を自動作成します。それによって、お客様が事故状況を説明する負担を減らし、迅速な事故解決を支援しています。
こうした提供価値の高度化において今後、重要なキーワードになるのが「パーソナライズ」です。お客様一人ひとりの属性や契約内容、Webの閲覧履歴などのデータを基にニーズを把握し、より適切な商品・サービスや情報を提供していくことが求められると考えています。