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全国に営業所を構え、多くの営業職員を抱える明治安田生命は、デジタル化の推進と並行して従業員の育成・確保を強化している。その背景には、デジタル時代だからこそ、人の力が求められ、人の役割が重要になると考えているからである。ヒューマンタッチを重視する同社のDX戦略を、推進リーダーに聞いた。
ライフスタイルの変化、規制緩和、フィンテックの台頭など、金融機関の経営環境は激変の一途。今やDXによる変革は待ったなしです。金融業界におけるDXキーパーソンへのインタビューにより、DX戦略の全体像から、データ活用、CX、カルチャー変革、デジタル人材育成まで、金融DXの最新の事例を取り上げます。
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保険の役割や営業スタイルの変化に対応する
――平均寿命の延びや医療費の増大、それらに伴う老後資金の問題など、社会環境が激変する中で、いま保険に求められるものはどのように変化してきているとお考えですか。
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1989年明治生命(当時)に入社後、財務部門・企画部門・人事部門等の幅広い領域で従事。2010年より法人営業企画グループマネジャー、 2013年より法人営業部長を歴任後、2016年に調査部長に就任。2019年からは明治安田グループのシンクタンクである明治安田総合研究所の社長に就任し、2021年4月より現職。
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好きな言葉:「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる」
注目するビジネスパーソン:生田目雅史氏(東京海上ホールディングス 常務執行役員 グループデジタル戦略総括)
若手のビジネスパーソンにお薦めの書籍:『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング他著)、『失敗の本質』(戸部良一他著)
永田康弘氏(以下敬称略) 生命保険は、かつては一家の大黒柱にもしものことがあったとき、収入が途絶えて家族が生活できなくならないよう、経済的に支えるという役割がありました。
その後状況は変わり、医療費の高騰、コロナ、老後の資金問題など、「生きること自体のリスク」に備える必要が出てきました。もしものときの保障と同様に、どうやって生きていこうかということが課題になっています。そのため保険の役割も、命の保障に加えて、生きるための保障を果たす部分が重要になっています。
加えて、今という時代を生きる人の価値観も変化しています。単に長生きするのではなく、ライフスタイルが多様化しているなかで、自分らしく生きる、健康に生きるということが重要になっています。保険会社が提供する価値は、自分らしく健康で豊かな生活を送るための一助になることだと考えています。
――顧客が健康に生きるためのサービスとしては、どのようなことに取り組んでいるのでしょうか。
永田 保険商品単体で実現するのは難しく、商品と、それに付随するサービスが一体として提供されることが必要です。
従来は保険事故が発生した際に保険金を支払う商品だけでしたが、お客さまからすれば、できれば保険事故に遭わないほうがいいわけです。例えば生活習慣病になるサインを捉え、このままいくと病気になる恐れがあるという人に対して、生活を改善することで病気を未然に防ぐアドバイスをする。こうしたサービスを、保険に組み込んだ形で提供することができればいいと思っています。
この考え方で進めているのが、2019年からスタートした「みんなの健活プロジェクト」です。お客さま専用サイトにて、健康診断の情報を提出してもらい、当社が独自にヘルスケアデータを分析した結果をもとに、健康状態をまとめた「MY健活レポート」を表示できます。このレポートでは、健康年齢をはじめ、疾病リスクの予測値を出して、健康維持と改善に向けたアドバイスを提供しています。
また、保険に対する考え方だけでなく、当社の事業スタイルも時代とともに変わっています。従来は、企業などに直接出入りをして営業することが当たり前でした。しかし、企業のセキュリティが厳しくなるなかでそれが難しくなり、さらにコロナ禍のテレワークの浸透によって、そもそもお客さまが出社していない状態が珍しいことではなくなりました。
お客さまと直接お会いすることができなくても、地域を支援する活動を通じて接点を持つことはできないか。その思いで始めたのが、もう一つの取り組みである「地元の元気プロジェクト」です。自治体と連携協定を結び、各都道府県の支社が窓口となって住民の健康増進や企業の健康経営の支援な
例えば、健診の受診率が他県よりも低い県では、当社の営業所がチラシを作成して住民に配布し、健診の受診を呼びかけています。これは単なるボランティアでなく、健康意識が生まれれば保険に対する興味も出てくることを狙ったもので、自治体や地元企業、お客さまなどの幅広いステークホルダーにメリットがあり、これこそ保険会社に求められているものだと確信しています。