金融業界の中でも早くからデジタル化に取り組んできた三井住友フィナンシャルグループ。そのデジタル戦略をリードするのが、グループCDIOを務める谷崎勝教氏だ。昨年、「Japan CDO of The Year 2022」(CDO Club Japan主催)を受賞するなど、DXのリーダーとして高い評価も得ている。デジタル化のフェーズからイノベーション創出に結び付け、真のDXを実現するには何が必要か。同社のこれまでの取り組みから解き明かす。

「CDO」ではなく「CDIO」にこだわった理由

――三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIOとしての谷崎さんのミッションについて伺います。

谷崎 勝教/三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO、三井住友銀行 専務執行役員

東京大学法学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。2013年、三井住友銀行常務執行役員、2015年、同取締役兼専務執行役員 兼 三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務。2019年、同専務執行役員 兼 三井住友フィナンシャルグループ執行役専務グループCDIO。現在に至る。
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■好きな本:キリスト教思想家、内村鑑三の講演録のタイトル『後世への最大遺物』
■注目する企業、経営者:「特定の企業や経営者というより、国内外の失敗事例に注目している。失敗から学ぶことは多い」
■DX関連でお薦めの本:『対デジタル・ディスラプター戦略』(マイケル・ウェイド著)

谷崎勝教氏(以下敬称略) 三井住友フィナンシャルグループのグループCDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)として、銀行以外にも、クレジットカード、証券、リース、私が社長を務める日本総合研究所といった、グループ全体のデジタル推進の総責任者を務めています。

――CDIOという名称には、「I(イノベーション)」が入っています。ここにかける思いとは。

谷崎 CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)だと、単にデジタル化すればいいとか、既存の業務の効率化だとかにフォーカスされがちです。私がリードしているのは、グループとして新しいビジネスをクリエートしていくことです。そのミッションを明確にするためにも、イノベーションという言葉を残したかった。

 われわれ金融グループが今やっている業務は未来永劫続くかどうか分かりません。一方で、デジタルの大きな波が来ていて、その中で新しい事業を生み出していかなければいけない。その方法論としてデジタルをどう活用していくかというのが大きなテーマであり、そうした思いがCDIOの「I」には込められています。

――御社は金融業界において、デジタル化にいち早く取り組んできた印象があります。一般的に保守的だと言われる業界の中で、そういうスタンスを取れたのはなぜですか。

谷崎 世間では、「金融とITの融合が進む」といった話が10年ほど前に話題になりましたが、私から言わせると、金融とITはもう半世紀以上前から一緒にやっています。そういう意味では、この金融グループにおけるコンピューターマシンを使うというカルチャーは50年以上の歴史があるわけですが、あくまでもその主眼は、業務の効率化やコスト削減にありました。

 ところが、インターネットの普及が本格化して以降、さまざまなテクノロジーが続々と登場する中で、金融ビジネスそのものが大きく変わってしまうのではないかという、将来に対する期待と危機感を併せ持つようになり、10年前の経営層がいろいろなことを考え始めました。

 2012年にネットビジネスに関するタスクフォースが立ち上がり、それがクロスファンクショナルチームに進化して、2015年にわれわれの源流であるITイノベーション推進部が発足しました。テクノロジーによって金融のビジネスモデルが変革を迫られる中で、私たちが今からやっていかなきゃいけないことは何なのか、新しい事業とは何か、今までと同じやり方でいいのか。こうした問い掛けからいろいろな活動がスタートし、7年が経過したということです。

 われわれにとってはロングジャーニーが確実に進んできているという感じがするのですが、ただ、その当時、明確なゴール設定があったわけではありません。どうなるか分からない。だけど、やっておかないと付いていけなくなる。そんな思いから、手探りで情報収集から始めたというのが正直なところで、それが他社に比べると早かったのかもしれません。