「健全な身体に健全な精神があれかし」という創業の原点
ランニングシューズをはじめ、主にスポーツシューズやウエアの製造・販売を手がけるアシックス。同社を1949年に興した鬼塚喜八郎氏は、創業哲学として“健全な身体に健全な精神があれかし”と唱え、そのラテン語表記である「Anima Sana In Corpore Sano」の頭文字が社名「ASICS」の由来になっている。
アシックスの代表取締役社長CEO兼COOの廣田康人氏は、同社の創業の原点や存在意義についてこう語る。
「鬼塚が神戸市で起業したのは第二次世界大戦後で、当時、荒廃した街の中で子供たちの心も荒れ、『このままではいけない。スポーツを通じて子供たちの健全な育成に関わっていきたい』という使命感から会社を立ち上げています。
その後、グローバル化が進み、技術の進歩や時代の変化のスピードが速くなっている現代でも、人々の“心”の大切さは変わりません。スポーツや運動をすることで心が健全に保たれるのはとても重要なことで、スポーツをするだけでなく、観戦しても一体感や高揚感が生まれますし、ボランティアでスポーツ競技を支えるというスタイルもある。スポーツが持つ力は国境を超えて非常に大きく、事業を通じてスポーツに深く関わる当社の意義も大きいといえます。
いま日本に限らず世界各国で寿命が伸びていますが、たとえば日本では平均寿命と健康寿命の間にはおよそ10歳程度の乖離があります。その乖離を可能な限り短くし、健康なまま一生涯過ごすことができたらこんなに素晴らしいことはありません。
我々もスポーツや運動を通じて、誰もが一生涯、心身ともに健全な生活が送れるサポートをしていきたいですし、鬼塚が説いた創業哲学は昔も今もこれからも、ずっと普遍性があると考えています」(廣田氏)
現在、アシックスの海外での売上げ比率は80%超に達しているが、〈健全な身体に健全な精神があれかし〉という創業哲学はグローバルにアシックス全社員の共通認識となっている。廣田氏は「この原点を今後も繰り返し説いていくことが経営の大きなミッションの1つ」と強調する。