1912年、畠山一清氏が創業したゐのくち式機械事務所をルーツにもつ荏原製作所。創業の精神「熱と誠」を礎にし、創業から110年以上たった今でも社会課題の解決に取り組み続けている。

創意工夫しながら誠心誠意取り組めば、成し遂げられないことはない

――御社の創業の精神はどのようなものだったのでしょう。

浅見 正男/荏原製作所 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 兼 COO

1986年 横浜国立大学工学部安全工学科卒、同年4月 荏原製作所に入社。LNGなど極低温用ポンプの技術営業や精密製品の海外営業を経て米国に赴任。2016年 精密・電子事業カンパニープレジデントに就任。2019年 取締役 代表執行役社長、2023年 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 兼 COO。
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座右の銘:「継続は力なり」
尊敬する経営者:稲盛和夫氏(「全従業員の幸せの追求」という経営理念に共感します。私自身は「世界を幸せにすること」を大切にしていますが、稲盛さんの著書である『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』を読みながら、果たして全従業員を幸せにできているのかと内省しました)
お薦めの書籍:『新しい市場のつくりかた』(三宅秀道著/新たな市場開拓に必要な要素が分かりやすく書かれているので、変革リーダー向けには最適かと思いました)

浅見正男氏(以下敬称略) 当社が創業した1912年当時は、国産のポンプはほとんどありませんでした。そこで創業者の畠山一清は「熱と誠」の精神で、世界的に認められた井口在屋博士の渦巻きポンプを製作するためにゐのくち式機械事務所を興し、これが荏原製作所の起源となりました。

 「熱と誠」とは、“与えられた仕事をただこなすのではなく、自ら創意工夫する熱意で取り組み、誠心誠意取り組めば、成し遂げられないことはない”という思いが込められた創業者 畠山一清の言葉です。その精神が今なお、社会課題に取り組み、貢献したいという社員の活動の源泉になっています。

――その精神は、今の時代にビジネスをする上でどのような意味を持っているとお考えですか。

浅見 当社は、戦後の復興や1980年代の高度経済成長など時代ごとの社会課題とともに、110年以上にわたり事業を拡大してきました。昨今の気候変動や自然災害の激甚化など地球環境が変化する中で、荏原製作所のできることは何か。今後もさらなる成長を続けるためにはどうすべきか。将来のありたい姿を明確にするため、2020年に10年後を見据えた長期ビジョン「E-Vision2030」を発表しました。その中で5つのマテリアリティ(重要課題)を掲げています。「持続可能な社会づくりへの貢献」と「進化する豊かな生活づくりへの貢献」では、IoT、クラウド、AI、自動車、5G(第5世代通信)の頭文字をとった「ICAC5」の技術を束ね、これらを実現していくことが豊かな暮らしの進化につながると考えています。「環境マネジメントの徹底」では、2022年に「2050年カーボンニュートラルの実現」を宣言しました。また、これらの課題を解決・改善させるために「人材の活躍促進」とし、ダイバーシティの推進にも取り組んでいます。そして、これら全てを基盤として支えているのが取締役会を頂点とするガバナンスです。「ガバナンスの更なる革新」では、執行サイドと経営陣が企業活動をサポートしながらリスクヘッジもしっかり行えるようにしています。