福島第一原子力発電所1号機では、被災の翌朝から早くも炉心溶融(メルトダウン)が始まっていたことが公表された。また、土壌や農作物、海洋生物にも深刻な放射能汚染が広がっていることが次々と明るみに出て、今回の原発事故は世界最大というのが世界の共通認識になっている。
柏崎の時にも繰り返した「想定外の地震」
例えば、英フィナンシャル・タイムズ紙はいくつかの記事の中で、「過去25年間で世界最悪の原子力災害をもたらした・・・」と福島第一原発の事故を形容している。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以上という認識だ。日本は有難くない世界一の座をまたしても手にしてしまった。
しかし、「最悪のケース」は大きな改善に向かう最大のチャンスでもある。二度と原発の事故を引き起こさないために、その変化を日本は求められている。
2007年7月16日午前10時13分に発生した中越沖地震によって、東京電力柏崎刈羽原子力発電所は7基ある原子炉がすべて緊急停止した。
この時にも、今回の福島第一原発と同じ表現を政府と東電は繰り返し使っている。
「想定外の地震だった」
3階建てビル以上の大きさがある変圧器が火災に見舞われ、使用済み核燃料プールからは放射能で汚染された水があふれ出た。
そして、3月11日の福島第一原発の事故である。柏崎の事故は放射能の汚染水を日本海に垂れ流すという問題は引き起こしたが、福島第一原発のような惨事にならずにすんだ。
しかし、原発の現場で働く人たちは「もしも」の危機感をいやというほど味わったはずである。そしてその危機意識を改革につなげていれば福島第一原発の事故は恐らく起きなかっただろう。
今回は、柏崎の轍を踏むわけにはいかない。何しろ世界最悪の原発事故となったのである。次の事故は許されない。今までの原発行政のあり方を根底から洗い直す必要がある。
中部電力浜岡原子力発電所の運転休止は当然のことだ。大きな揺れを受けて原子炉や原子炉格納容器の一部が塑性変形を起こしている危険性がある柏崎刈羽原発の廃炉も検討すべき課題だろう。次に大きな揺れが来れば、次は破断に至る危険性が高いからだ。