福島第一原発、1号炉で、炉心の過熱による溶融と圧力容器内での落下、いわゆる「メルトダウン」が、従来言われていたよりはるかに早く、3月12日の午前6時50分頃に起きていた、との解析結果が、東京電力ならびに経済産業省の原子力安全・保安院からありました。
冷却水が止まって3時間後に始まったメルトダウン
改めて、原発の緊急時対策を見直してみると、仮にすべての冷却水が止まってしまうと、約3時間ほどで使用済み核燃料の崩壊熱によって燃料棒が破損し始め、数時間で炉心全体に影響が及ぶ、と元来考えられていたことが分かります。
改めて3月12日を振り返って、いかがだったでしょうか?
私は11日の地震のあと福島原発の事故が報道され、NHKに出演していた同僚の工学部の先生の解説に沿って、その内容から物理学の基礎がないと誤解しやすい細部を、ツイッター上で補うということをしていました。
この時点では、東京電力福島第一原発の状況はほとんど外部に知られておらず、また原発の中でも事態の正確な状況は把握されておらず、あるだけの情報からベストを尽くしてどなたも考えておられた、と思いたいところです。
が、結果的に地震が午後3時前にあったあと、翌日の早朝には炉心の大半は融け落ちて、圧力容器内の途中、制御棒がスクラムを組む枠の途中に引っかかっていた、あるいはさらに融け落ちて、圧力容器の底に溜まっていたもようです。
あらゆる機会でデータの確認を
炉内の水位計の値の上下にはらはらしながら、社会の大半は「燃料棒が水面より上に露出している」という言葉の意味もよく分からず、さらに「ダウンスケール」という言葉の意味(燃料棒がすべて冷却水より上に露出して、継続して冷やすことができなくなる状態)も定かでないまま、不安な気持ちで報道を追っていたと思います。
が、少なくとも1号炉については、その時点ですでに一定以上の核燃料と使用済み核燃料が炉心の体をなさず、冷却水の底に落ちて溜まっていた可能性がある、そういう報道がなされています。
「水位計」はあくまで圧力容器の中で、水面の高さがどのへんにあるか、という情報しか与えてくれません。炉の真ん中にあるはずの燃料棒、その中の低濃縮ウランや燃えカスの放射性ゴミが、そこにきちんと収まっているかどうかは、誰も見ることができない。
地震から2カ月経ち、より詳細な実態が分かるようになって、このような試算が出たのだと思いますが、正直に申して本稿を書いている段階で、私自身、この「スクラム状態の炉心の崩壊プロセス」を、どのように解析しているのか、正確なところを理解していません。