日韓中首脳が顔を揃えて被災地を訪問し、現地の野菜や果物をほおばって見せるパフォーマンスは、率直に言って大変に見苦しいものでした。
何も福島の野菜や果物に問題があるなどと言いたいわけではありません。いわゆる「風評被害」は可能な限り回避して、現地の1日も早い復興を祈る気持ちに変わりはありません。
震災と事故後、この機に、とばかりに日本製品の輸入に制限をかけた中国は、一部農産物を除いて輸入制限を撤廃。
原子力発電所がいけないわけではない、福島原発は想定外の天災に加えて、炉の取り扱いにたまたま問題があって、あのようなことになってしまった。
従来型の原子炉は、今後も現役で大いに頑張ってもらわなければならない、引き続き地球環境にやさしい原子力発電の堅持と推進に手を携えていきましょう、というパフォーマンス、その有りようを醜悪に思ったのです。
醜悪なシナリオの追認
率直に思うところを述べますが、日本では当分、原子力発電所のフル稼働は難しいでしょうし、新たな原発の増設は当面は不可能に近い世論と思います。
現状から不拡大、追って漸次減少~撤廃の方向での「ソフトランディング」が、福島以降の日本のエネルギー政策を考える際の原子力発電の行く末として考えられる、1つのシナリオと思います。
しかし、当然ながらそんなふうに思ってこなかった人たちがたくさんいたわけです。国内原子力関係者は言うまでもないですが、もっと露骨なのはフランスであり米国であり、つまり国策として日本以上に原子力に役割を与えている諸外国を考える必要があります。
例えば米国にとって原子炉は主要な輸出製品の1つ、今回福島で壊れた1号機は米国製の最初期の輸出原子炉で、40年の年季をちょうど終えるところではありました。これが壊れて日本が原子力から撤退ということになるのは、歓迎されるところではないでしょう。
中国も韓国も、脱炭素化の追い風とともに原子力発電推進の方向に舵を切ってきた。安全保障の観点から核軍備を考える国にとって、原子力産業と原発の導入は1つのカードを手にすることを意味します。