サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ=69)会長の最近の発言が、韓国で注目を浴びている。というのも、業績の悪化、政府との対立、米アップルとの訴訟・・・などサムスングループを巡って最近、さえない話が続いているからだ。
韓国経済界、政界を揺るがした李健熙会長の発言
4月末以降、本社への「出勤」も始めた李健熙会長の最近の発言録から、サムスングループを取り巻く動きを追ってみた。
李健熙会長が積極的な発言の口火を切ったのは、2011年3月10日。ソウルのホテルで開かれた全国経済人連合会(全経連=日本の経団連に相当)の夕食会に出席した際、記者団の質問に応じた。
「私は幼い頃から企業家の家で育ち、学校でも経済学を学んだが、あんな用語は聞いたこともない。理解もできないし、何のことか分からない。一体、誰が作った用語なのか。社会主義国家で使うのか、資本主義国家で使うのか、はたまた共産主義国家で使うのか、分からない」
李健熙会長が「訳が分からない」と批判した用語とは、「超過利益共有制」のこと。この奇怪な用語の提唱者は、ソウル大総長出身で李明博(イ・ミョンバク)政権で首相も歴任し、次期大統領候補の1人とも言われる鄭雲燦(チョン・ウンチャン)氏。
「大企業ばかりが儲けている」という批判に応えて政府内にできた中小企業支援のための専門組織の委員長を務めていた。野心満々の鄭委員長は、いろいろな提言を出して大企業を圧迫したが、極めつきが「超過利益共有制」だった。
李健熙会長に続きほかの経済人も相次いで鄭委員長批判
英語は profit sharing だが、その意味するところは、大企業の一部の利益を吐き出させ、中小企業振興に使うという意味だ。
「超過利益」の定義も不明な、人気取り政策だった。
それでも、大物である鄭委員長を正面から批判する経済人などいなかった。この日、李健熙会長は痛烈に批判し、経済界を代表してNOを突きつけた。
この発言を機にほかの経済人も相次いで鄭委員長の構想を批判し、「超過利益共有制」を事実上葬り去った。経済界を説得できない鄭委員長の評価も一気に凋落した。