5月9~10日、米ワシントンD.C.で米中戦略・経済対話(S&ED)が開かれた。S&EDは既に過去2回、2009年にワシントン、2010年に北京でそれぞれ開催されており、今回は第3回目となる。

 S&EDの経緯については以前(中国株式会社の研究その61その62)詳しく書いたので、ここでは繰り返さない。今回は第3回S&EDから見えてくる米中関係の現状について考察してみよう。

分かれる評価

 大した成果がなくても、当事者である米中両国政府は今回のS&EDを自画自賛している。「今回の対話は両国間の相互信頼を強化し、中米関係の安定した発展に重要かつ建設的な役割を果たした」というのが共通の公式評価のようだ。当然だろう。

 特に、中国政府系メディアは、中米間協力パートナーシップ、戦略的相互信頼関係、アジア太平洋での互恵協力の強化といった美辞麗句を並べつつ、米主要メディアがS&EDを「相互理解と相互信頼を深め、協力の拡大を促した」と評価したなどと報じている。

 もちろん、米国メディアの評価はこれほど手放しのものではない。

 例えば、ワシントン・ポストは米中軍高官対話の開始や経済分野での中国側の一部譲歩などの「成果」を好意的に報じているのに対し、ニューヨーク・タイムズは「成果よりも希望の多い米中対話(More Hopes Than Gains at U.S.-China Meetings)」と題するやや批判的な論評を掲載している、といった具合だ。

 日本メディアの評価もほぼ同様である。一部には「米中、貿易不均衡是正・人民元弾力化で合意」といった好意的な見出しもあるが、大方は、「米中平行線」「目立った進展なし」「人民元・人権では歩み寄らず」などとかなり批判的に見ているようだ。

めぼしい成果なし

 確かに前回と同様、今回のS&EDでも具体的成果は少ない。中国側が約束した事項の中で実質的意味があると思われるものも、次の通り、数えるほどしかない。いずれも特定分野の特定商品についての「小出し譲歩」に過ぎないし、もちろん詳細は不明である。

●米国を含む外国企業に自動車保険の販売を認めること
●米国を含む外国企業に投資信託などの投資商品の販売を認めること

●米国を含む外国企業に社債の引き受け業務を認めること
●米側に対し中国の輸出信用制度について詳しく説明したこと