今回は前回に引き続き、「米中戦略・経済対話」の話をするつもりだった。ところが6月2日に鳩山由紀夫首相が「突然」辞任を表明した以上、全くこれに触れないわけにはいかない。しかも、辞任表明は温家宝首相離日の翌日だったではないか。
ここはやはり「鳩山辞任」から始めたい。(文中敬称略)
鳩山辞任を中国はどう見たか
「鳩山首相は中日関係の発展に重要な努力をされた。日本の政局にどのような変化があっても、中日の戦略互恵関係を継続し推進していきたい」
予想通り、中国側の公式見解は実にオーソドックスなものだった。しかし、中国国内の関心は予想以上に高かったようだ。
新華社は鳩山辞任表明を至急報で伝え、中央テレビ局も東京からのリポートを詳しく報じた。ネット最大手検索サイト「百度」でも「鳩山 辞職」は6月2日のニュース検索ワード・ランキング第1位だったそうだ。
同時に、中国から届く報道の中には、中国は対中関係を重視した鳩山首相の辞任に失望しているとか、鳩山辞任でも日本の対中政策に大きな変化はないとか、いい加減な分析記事も少なくなかった。
結論から言えば、対日政策関係者や専門の学者ならともかく、中国の政治指導者たちは報じられるほど鳩山辞職に「失望」などしていないし、同時に、日本の新政権が鳩山首相と同様、対中関係を重視し続けるとも「期待」していないだろう。筆者がそう考える理由は次の通りだ。
「取引」する必要のない鳩山内閣
中国外交の戦略目標はあくまで対米関係の維持・管理である。残念ながら、対日関係は主要な従属変数の1つに過ぎない。しかも、鳩山政権の下で日米関係はギクシャクし始めた。
中国は何もしなくても日米同盟が勝手に迷走してくれるのだから、中国にとってはまさに「タナボタ」だろう。
鳩山首相が辞任しても、民主党政権の構造的な脆弱さは変わりそうもない。仮に後継新政権が対米関係修復に動いても、あれだけ傷ついた日米同盟は簡単には元に戻らない。万一戻ったとしても、自民党政権時代の状況と同じではないか。されば、中国は恐れる必要はない。
中国側は民主党政権にあまり「失望」も「期待」もしていないはずだ。まして、日本人ですら何を考えているか分からない鳩山首相と真剣に「取引」する意図があったとは思えない。