対中301条鉄鋼関税に引き上げ検討

 次に、対中301条鉄鋼関税を現行の3倍に引き上げることを検討するよう米通商代表に求めた。

 バイデン氏は、中国政府による長きにわたる中国鉄鋼企業への補助金が過剰生産を生み出した結果、中国製鉄鋼が不当な安価でグローバル市場に輸出され、米国の鉄鋼労働者の雇用を奪ったと主張し、「もう二度とこのようなことは起こさせないと約束する」と訴えた。

 そして、トランプ政権期に課された、1974年通商法第301条に基づく対中関税の見直しを現在行っている米通商代表に対し、中国の反競争的貿易慣行が認められた場合には、現行平均7.5%の対中鉄鋼関税率を3倍に引き上げることを検討するよう求めた。

 これに関する米政府の説明資料(ファクトシート)では、「鉄鋼は米経済の屋台骨」「米国製鉄鋼は、米国の経済・国家安全保障に不可欠」であることが強調されている。

 さらに、バイデン氏は「中国製鉄鋼(およびアルミニウム)が、これらの関税を回避するために、メキシコを経由して米国に輸入されている」ことに対処するため、メキシコに協力を求めた。

 キャサリン・タイ米通商代表は2月、メキシコから米国への鉄鋼輸出増と、メキシコの第三国からの鉄鋼輸入に関する透明性の欠如に対して即座に意味のある措置をとるようメキシコ政府に要求した。

 その際には、現在撤廃されている1962年通商拡大法第232条に基づく鉄鋼製品への追加関税の再発動をちらつかせている。メキシコ政府は米国の要求に応えるとともに、米国が追加関税を再発動した場合には、報復措置をとることを示唆している。

海事・造船分野の301条調査開始

 続いて、中国の海事・造船分野での不公正貿易慣行に関して、1974年通商法第301条に基づく調査の開始を表明した。同調査はUSWを含む5つの労働組合が要請していたものであり、同分野における中国の非市場的政策・慣行により、米産業が損害を蒙っているというものだ。

 米通商代表部(USTR)が公聴会やパブリック・コメント等を通じて今後調査を行う。また、中国に対しては既に協議を要請している。

 バイデン氏は、「我々は、米国製品を世界中に運ぶ商船に依存している」「造船は、米海軍の強さを含む、米国の国家安全保障にとって不可欠である」と、同分野の重要性を強調した。