干ばつによって土地を追われる人は増えていく(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの衝突など国際情勢は混迷を極め、住む場所を追われる人々の数は増加の一途を辿っている。そのような中、2023年12月に、難民に関する世界最大の国際会議「グローバル難民フォーラム(GRF)」がスイス ジュネーブで開催された。本フォーラムは、2018年に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」で掲げられた目標実現のため、4年に一度開催されている。

 今まさに企業が対応を求められる「ビジネスと人権」の文脈でも、難民の包摂は重要なアジェンダ。国際社会の最前線で起きている議論、そして日本社会が取り得る難民包摂の方向性を、現地参加した筆者がレポートする。

(大久保明日奈:オウルズコンサルティンググループ プリンシパル)

 ロシアによるウクライナ侵攻から2年が経過したが、戦闘は長期化している。ウクライナから国外に避難した難民は、全人口約4100万人のうち634万人以上とされる(※1)

※1:ウクライナの状況(国連UNHCR協会)

 また、パレスチナのガザ地区では、2023年10月7日からイスラエル軍とイスラム組織ハマスの衝突が続き、難民キャンプからパレスチナ人が避難を余儀なくされるなど、情勢は混迷を極めている。

 迫害、紛争、暴力、人権侵害などにより2023年時点で故郷を追われた人の数は約1億1170万人とされ、全世界人口の1%以上となる計算だ(※2)。気候変動や自然災害により、2050年までに世界で12億人が避難する可能性があるという報告もされており(※3)、増加の一途を辿る難民への支援は急務となっている。

※2:GLOBAL APPEAL 2023(UNHCR)
※3:Over one billion people at threat of being displaced by 2050 due to environmental change, conflict and civil unrest(Institute for Economics & Peace)

 世界的に難民問題に関心が高まる中、2023年12月13日から15日にかけて「グローバル難民フォーラム(GRF)」がスイス ジュネーブで開催された。このフォーラムは2018年12月に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」の目標実現のため、4年に一度開催される難民に関する世界最大の国際会議だ。

「難民に関するグローバル・コンパクト」は、「難民受け入れ国の負担軽減」「難民の自立促進」「第三国定住の拡大」「安全かつ尊厳ある帰還に向けた環境整備」を大きなポイントとしており、「社会全体(whole of society)で取り組む難民支援」の重要性を掲げている。

 2回目となった2023年のGRFは、日本、コロンビア、フランス、ヨルダン、ウガンダの5カ国が共同議長国を務め、スイス政府と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が共催した。

 政府、民間企業、国際機関、難民、市民社会の代表が世界中から一堂に会し、168カ国から4200人以上、うち300人以上の難民代表が参加した。

 GRFの中心は、各国政府主導による43のマルチ・パートナーのコミットメントを含む、難民とその受け入れコミュニティの支援に関する1600 件以上の宣言(プレッジ)の公表だ。

 ビジネスと人権社会全体で難民問題に取り組む必要性とベストプラクティス共有の場となったが、その中でもビジネスセクターの存在感は大きく、日本においても企業への要請が高まる「ビジネスと人権」の文脈でも重要な考え方が示された。

 筆者は11月開催の第12回「国連ビジネスと人権フォーラム」とGRFの双方に参加したが、サイドイベントも含めると、GRFでは特にビジネスセクターの参画が活発だった印象だ。

【関連記事】
2023年に注目を集めた「ビジネスと人権」、その最前線で起きている新しい議論(JBpress)