都知事選挙が始まる前に、カイロ大学が1976年に小池氏が同大学を卒業したという声明を出したが、これは政治的な工作の疑いが濃厚で、ますます疑惑が深まっている。彼女が国政の場に復帰し、政権に参画すれば、日本外交は成り立たなくなるだろう。

 東京都は都市外交は可能であるが、国の外交は政府の専権事項である。エジプト政府に弱みを握られた以上、国家安全保障に関わる由々しき問題となる。都知事として再選されるだろうが、今回、黒木氏らが呈した疑問にきちんと答えないことは、彼女の国政復帰の道を完全に閉ざしたとことを意味する。40年以上にわたって嘘をつき続けてきたことの代償は、彼女にとっても大きなものとなろう。

小池都政下で停滞した東京の地位

 一方で、東京都政がどうでもよいものでも、軽んじてよいものでもない。日本国の首都であり、政治や経済の中心地である。海外から見ると、日本の最高権力者は首相で、2番目が都知事である。私が都知事のときも、今回、小池氏のためにカイロ大学に声明を出させたと思われるエジプト政府の最高権力者、シーシー大統領をはじめ、首脳クラスの要人が多数会談を求めてきた。

 その東京が停滞している。世界の都市ランキングは、1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位パリ、4位東京だったが、私が都知事のときに諸施策を動員して、パリを追い抜き、3位に躍り出た。ところが、小池都政4年間で、また4位に転落している。

 その最大の原因は都市計画の不在である。東京が100年輝く都市であるためには、常にリフォームし続けなければならない。私たちが住む家と同じである。建築当時には最先端の建物であっても次第に時代遅れになっていく。そこで、新技術や新素材を活用するリノベーションが不可欠なのである。