イスラエルによるガザ南部ラファへの激しい攻撃が続いている(写真:AP/アフロ)

パレスチナ自治区ガザで激しい攻撃を続けるイスラエルと、ガザを実効支配するハマスが「ラマダン(断食月)」期間中の停戦に向けて大詰めの交渉を続けています。激しい戦闘の結果、ガザ地区の死者は女性と子どもを中心に3万人以上に達したとされています。今年のラマダンは3月10日ごろから4月9日ごろまで。この間、イスラム教徒が断食することはよく知られていますが、そもそもイスラム教徒にとってラマダンはどんな意味を持つのでしょうか。ガザの現状を含めて、専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

「ラマダン」の時期は毎年変わる

 ラマダンとは、イスラム教の暦(ヒジュラ暦)で9番目に当たる月の名称です。預言者ムハンマドが最初に神(アッラー)の啓示を受けた「聖なる月」でもあります。この期間中、イスラム教徒は日の出から日没まで、水を含めた一切の飲食を禁じられています。喫煙や性交渉も禁止。厳密にはつばを飲み込むことも許されません。

 これは、「日々の礼拝」や「貧しい人への施し(喜捨)」などと並ぶイスラム教徒の果たすべき5つの義務の1つです。イスラム教の聖典・コーランには、断食をすれば「真に神を畏(おそ)れかしこむ気持ちが出てこよう」(中村廣治郎著「イスラム教入門」)とだけ記されています。断食の苦しみを通じて、神の恵みに感謝するとともに、貧しい人々に思いをはせる意味があると解釈されています。ただ、子どもや病人、妊婦、兵士らは義務を免除されます。

パレスチナ政府公式サイトの資料などからフロントラインプレス作成

 ヒジュラ暦の元年は、ムハンマドがイスラム教を興し、メッカからメディナに移住した年です(西暦622年)。1カ月の基準は月の満ち欠け。新月が現れた後、月が満ち欠けし、また新月を迎えるまでの29.5日がひと月です。つまり、1カ月の長さは29日か30日のどちらかで、1年の長さは354日。私たちが馴染んでいる太陽暦よりも11日短い計算になります。

 このため、ラマダンの時期は毎年ずれます。真夏のことも冬のこともあります。今年は3月10日から4月9日ごろまで。正式な始まりは各国のイスラム機関が月を観察して決めます。