2023年ノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマーディ氏(2008年7月3日撮影資料写真、写真:AP/アフロ)

 様々な観点から、今年のノーベル平和賞がこういう選択になった背景や事情が、実に分かりやすい授賞になっていると思います。

 受賞者はイランの「女性人権活動家」ナルゲス・モハンマーディ氏。

 1972年生まれですから今年51歳、元来はドイツのアンゲラ・メルケル元首相と同様、原子核物理学を専攻した「リケジョ」、合理的で頭の切れる女性と知れます。

 ノルウェーのノーベル委員会が発表した授賞理由を見てみましょう。

「ノルウェー・ノーベル委員会は、イランにおける女性の抑圧との戦い(fight)とすべての人の人権と自由を促進するための闘争(fight)、2023年のノーベル平和賞をナルゲス・モハマディ氏に授与することを決定した」

 最初の一文に2回も「Fight(戦う)」という言葉が出てきている点に注目。平和賞ですが「戦い」を表彰する、その発表後半を見てみましょう。

「今年の平和賞は、前年に女性を対象としたイランの神権政権(Iran’s theocratic regime)の差別と抑圧政策に反対してデモを行った数十万人もの人々も表彰するものである」

「デモ参加者が採用したモットー(女性―人生―自由)は、ナルゲス・モハマーディの献身と仕事を適切に表現している」

 つまり、女性、人生、自由のための戦いを高く顕彰しましょうというのが、2023年のノーベル平和賞のテーマであるというのです。

 ノーベル平和賞はノルウェー国会が選ぶ5人のメンバーが選定しています。

 ノルウェー国会は現職の議員や閣僚の委員就任を禁止するなど「中立性を保つ」としていますが、本質的に平和賞はメッセージとしての政治性を免れることがありません。

 イランの神権政権側は「政治的な賞だ」と反対コメントを発していますが、政治的な賞に政治的なショーと言い返しても何の意味もありません。

 日本国内でこのニュースを見て、第一に想起せざるを得ないのは「統一教会」への「解散命令」請求でしょう。

 つまり「神権」や信仰を笠に着て非道を働く暴力に対して「戦う」人を、高く顕彰しているわけです。