(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年9月25日付)

米国のジョー・バイデン大統領と会談したウクライナのゼレンスキー大統領(ホワイトハウスで9月22日、ウクライナ大統領府のサイトより)

 ロシアとウクライナはともに、来年3月に大統領選挙を実施することになっている。独裁的なロシアは予定通りに進める。

 だが、民主主義国のウクライナにとっては、ロシアの攻撃の脅威に絶えずさらされ、戒厳令の制約があるなか、事ははるかに複雑だ。

 来月予定されていた議会選挙はすでに事実上中止された。

 戦争が長引く展望はウクライナに難問を突きつける。国の指導者への負託を新たにするまで、どれくらい待つことができるのか。

 安全保障やロジスティクス、法律上の障害にもかかわらず選挙を実施することによって、国の民主的な資質を証明するべきなのか――。

 西側の一部の政治家はそうすべきだと考えている。

自由で公正な選挙は民主主義のシンボル

 欧州評議会の議員会議を率いるオランダ人のティーニー・コックス氏は今年、オンラインメディアのウクライナ・プラウダに対し、「(選挙を)やらなければテーブルから質問が出てくる。ロシアが我々に対して布告したこの侵略戦争で、我々は一体何を守ったのかという問いだ」と語った。

 米国のリンゼー・グラム上院議員は8月に首都キーウ(キエフ)を訪問した後、「戦争の最中に自由で公正な選挙を実施すること以上に良いウクライナのシンボル」は思いつかないと語った。

 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は選挙の障害をすべて挙げてみせた。

 戒厳令の下では選挙が認められていないこと、500万人ものウクライナ人が国内で住まいを追われ、選挙区の外に暮らしていること、さらに数百万人が海外にいて大使館でしか投票を認められないことなどだ。