(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年8月31日付)

ロシア経済は戦争により疲弊しているが、戦争をやめようと思わせるほどには悪化していない

 ロシアの政府統計局によると、今年6月の自動車、トレーラー、セミトレーラーの生産台数は2022年6月より50%以上多かった。

 一方、ロシアの中央銀行は、今年第1四半期の工業系企業における労働力不足が1998年に統計が始まって以来最も深刻だったと報告した。

 中銀はまた、過去3カ月間のインフレが年率7.6%だったと推計している。年4%の目標を大きく上回る水準だ。

戦争経済を支える手段はまだある

 当然、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアの公式経済統計はかなり慎重に扱わなければならない。

 だが、これら3つの指標が描く光景は恐らく、真実からそう遠くかけ離れていない。

 全面的なウクライナ侵攻から1年半経った今、インフレや労働力不足、政府の歳出増加、赤字財政など、ロシアは戦時経済の典型的な症状を見せている。

 ウクライナ政府と西側の支援国にとって問題は、ロシア経済にかかる圧力が著しく激化し、将来どこかの時点でウクライナ併合を狙うクレムリンの戦争を完全に頓挫させるかどうか、だ。

 西側の制裁は、特にロシアの石油・ガス輸出収入を大幅に落ち込ませることによって、こうした圧力を間違いなく強めている。

 しかし、クレムリンの政策立案者にはまだ、軍事化された経済を維持する手段が残されている。

 例えば、金(ゴールド)や中国人民元を含む流動資産の一種の予備ファンドであるロシア国民福祉基金からの資金の引き出しを増やすことは可能だ。

 当局は国内での債券発行を増やすこともできるだろう。