(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年8月29日付)

プーチンによって暗殺された可能性の高いプリゴジン(6月24日撮影)

「我々はギャングではない。マフィアではない。マリオ・プーゾの小説『ゴッドファーザー』で連中がやったように復讐を企てたりしない。我々は国だ。法治国家だ」

 これはロシアのテレビ司会者ウラジーミル・ソロビョフの抗議の言葉で、エフゲニー・プリゴジンが死亡した飛行機爆発にクレムリンが関与したことを一切否定したものだ。

 ソロビョフの発言は「qui s'excuse s'accuse」(言い訳する者は自らを告発する=罪悪感を露呈するの意)というフランスのあの素晴らしい諺の好例だ。

 クレムリンのプロパガンダを売り込むソロビョフは、プリゴジン殺害にはマフィアの殺しの特徴がすべて備わっていることを完全に理解している。

プーチンが従うギャングの掟

 ウラジーミル・プーチンはギャングの名誉の掟に従っている。裏切りと背信は決して許されない罪だ。

 ロシアの情報機関から離反した人間を殺すために、クレムリンが欧州各地に殺し屋を送り込んできたのは、このためだ。

 民間軍事会社ワグネルのボスとして、「プーチンのシェフ」として知られるプリゴジンはウクライナでのロシアの戦争に大砲の餌食になる兵士を送り込んだ。

 だが、今年6月にプーチンに反旗を翻した時、自分自身の死刑執行令状に署名した。

 映画ファンなら誰でも知っているように、復讐を果たさないとドンが弱く見えるというのがマフィアの掟だ。

 プリゴジンの反乱からその死までに2カ月の時間が経った。

 ただやはり、ゴッドファーザーでドン・コルリオーネが言うように、「復讐は冷やして食べるのが一番いい料理」だ。