新規国債の大量発行が続く

 2022年11月にあったのは米中間選挙です。共和党が下院の多数派を占めたことで、与野党が対立する債務上限問題が長期化しました。それが解決に向かったのが2023年5月下旬です(正確には6月1日に決着)。その後、枯渇した政府財源を回復させるため、空前の新規国債発行が始まりました。

 つまり長期金利が3.5%から4.3%台に戻ったのは、パウエルFRB議長の発言や各種統計の結果によるのではなく、国債の増発発表が原因だったと言えるのではないでしょうか。

 直近の長期金利の動きをみてみましょう。

 8月1日に格付け会社のフィッチが米国債の格下げしました。その翌日、米財務省は向こう1年間の国債発行額について、今年8月以降、毎月の国債発行額を2023年7月の発行額(2220億ドル)から6割増の3540億ドルにする計画を発表しました。

 しかも今年7月から9月の3カ月間に限れば、約1兆ドルの国債を新規に発行するというのです。今年3月末時点の米国債残高(短期債以外の市場性がある国債)は20兆ドルです。債券市場は発行額の大きさに驚き、金利が上がり始めたというわけです。

 次に2022年以降の株価をみると、金利が1.5%から4.3%台へ上昇する過程で株価は大幅に下落しました。株高が始まったのは、金利が4.3%で頭打ちになったのをみてからです。その後、金利が3.5%に低下する過程で株価は上昇基調を取り戻します。

 そして債務上限問題が解決した6〜7月は、金利の上昇を気にすることなく株価は急伸しました。8月に入ると、前述した国債発行の増額発表を嫌気して反落しましたが、ジグザグしながらも株価高騰の余韻はまだ残っています。

 これは危うい状況です。