南シナ海で「航行の自由作戦」を実施する米駆逐艦「ラルフ・ジョンソン」(資料写真、2020年7月15日、出所:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

 米国のバイデン大統領は、ウクライナ支援のために米軍を直接ウクライナに派遣することはあり得ないと明言している。そのため台湾では、もし中国が軍事力を直接行使して台湾独立派を排除して“統一”を完成させようとした場合にも、アメリカ政府は米軍を派遣せず、ウクライナのように台湾も見捨てるのではないかとの懸念が広がっている。

 このような状況下で、2月26日、米第7艦隊駆逐艦「ラルフ・ジョンソン」(母港:横須賀)が台湾海峡を南から北に通航したことを台湾軍当局が発表した。米海軍当局も、台湾海峡航行の事実を公表した。一方、中国軍側によると、同艦の台湾海峡通過中、台湾海峡南方上空から米海軍「EP-3E」電子偵察機が電子情報を送り続け支援していたという。

台湾海峡を航行するラルフ・ジョンソン

「まったく脅威になっていない」と中国側

 米国および台湾は昨年(2021年)11月以来3カ月ぶりの台湾海峡通過と公表しているが、中国軍関係シンクタンクによると、中国軍は米軍による台湾海峡での行動を克明に追跡分析しており、2021年12月15日には駆逐艦「チェイフィー」(母港:パールハーバー)が、2022年1月22日には駆逐艦「デューイ」(母港:横須賀)がそれぞれ台湾海峡を通過しているとのことである。