40ドル割れの可能性が出てきた原油価格

高まる原油需要減少の懸念、減産合意の実効性には疑問符

2018.12.21(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55014
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 欧州経済の雄であるドイツでもバブル崩壊の懸念が生じている。リーマンショック以降、居住用住宅価格が40%上昇している(2018年8月10日付東洋経済オンライン)からだが、米国や中国を始めとする世界経済がおかしくなれば、ドイツの不動産バブル崩壊も現実味を帯びてくる。

 国際通貨基金(IMF)は13日、「世界が抱える債務はリーマンショック以降の世界各国の大規模な金融緩和策により2017年に184兆ドルに膨らみ、過去最大を更新した」と発表した。「巨大な債務の山が崩れだしたら」と思っただけで背筋が寒くなる。

 ロイター(12月13日付)は、「2019年経済展望、何でもありの『ブラックスワン』」と題するコラムを掲載した。その中で「原油(価格)は極めてもろく、(1バレル=)20ドルになる確率の方が急なリバウンドの確率より高い」としているが、チャート分析によれば、原油価格は今後1バレル=30ドル台前半まで下落する可能性がある(リーマンショック後の2009年3月の原油価格は同33ドルまで急落した)。

サウジアラビアが懸念する「米国のサウジ離れ」

 最後にサウジアラビア情勢である。

 19日、サウジアラビア政府は2019年予算を公表した。前年比7%増の295億ドルと史上最大規模であるが、歳入の大半を占める原油価格を1バレル=80ドルと想定している。

 原油価格の見通しに不透明感が漂う中でサウジアラビアが苦肉の策として考え出したのは、米国への原油輸出を大幅に削減することである(12月14日付ブルームバーグ)。2000年代前半に日量200万バレル以上だった米国への原油輸出量を4分の1にまで削減する計画だ。その狙いは、米国の原油在庫を減少させることである。このところ増加傾向にある米国の原油在庫を減らせば原油価格は上昇するという算段だ。

 だが、パイプラインの改修が進みカナダからの原油輸出が増加していることから、この目論見は「水の泡」となってしまうかもしれない。

 サウジアラビアの意図に反して米国への原油輸出量を削減する行為が「米国のサウジ離れ」を加速することも「後顧の憂い」である。

 米上院は13日の本会議で「国在住だったサウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件はサウジアラビアのムハンマド皇太子に責任がある」と非難する決議案を全会一致で採択し、同時に、トランプ政権に対してイエメン内戦での米軍によるサウジアラビア支援の中止を求める決議案を賛成多数で可決した。

 また翌14日には米主要メディアが、「トランプ氏を支持する特別政治活動委員会(スーパーPAC)がサウジアラビアから違法に献金を受け取った疑いでニューヨーク連邦検査が捜査を始めた」と一斉に報じた。ロシア疑惑に続くサウジアラビア疑惑の浮上である。

 その中でトランプ政権は、自らの要請に反してまで12月7日の減産合意を成立させた上、原油価格の高止まりを企むサウジアラビアを、いつまで擁護するのだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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