40ドル割れの可能性が出てきた原油価格

高まる原油需要減少の懸念、減産合意の実効性には疑問符

2018.12.21(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55014
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 米FRBが昨年末以降ベースマネーの伸びを前年比マイナスにしたことで商品価格が軒並み下落したが、原油価格のみが高値を維持してきた。だが11月の「米国のイラン制裁」が期待外れだったことから原油価格が急落し、信用スプレッドが拡大し始めたのである。

 ジャンク債市場から資金流出が始まっているが、それ以上に悲惨な状況になっているのがレバレッジドローン市場である。レバレッジドローンとは高債務の企業向けの融資のことだ。投資家を保護する目的で信用を補強するためにローン担保証券(CLO)が組成されたことにより、高い利回りを求める投資家の資金が大量に流入し、米国のレバレッジドローン市場は1兆ドルを超える規模になった。数カ月前には額面を上回って取引されている規模が70%を超えていた。

 だが、その割合が1%を割り込むまでに減ったことで、12月に入ると同市場から大量の資金が流出し始めている(12月17日付ブルームバーグ)。レバレッジドローン市場でもシェール関連企業のウェイトが大きいとされており、原油価格の急落により、ジャンク債以上に急拡大していたレバレッジドローン市場のセンチメントが一気に悪化したと考えられる。

 心配なのは、レバレッジドローン市場に大量の資金を投入しているのが日本の銀行であるということだ(12月17日付ブルームバーグ)。UBSによれば、日本の銀行は最上級のトリプルA格付けのCLOを購入しているが、過去数年でこのアセットクラスに流入した資金のうち、日本の銀行が33%を占めているという。リーマンショックの引き金となったサブプライム関連金融商品にさほど手を付けなかったことから日本の銀行は比較的ダメージが少なかったが、今後米国の金融市場で危機が生ずれば、最も打撃を受けるのは日本の銀行かもしれない。

 原油価格の急落をきっかけに総崩れとなったレバレッジドローン市場の影響を受けてジャンク債市場もさらに悪化することが予想される。今後、米国の株式市場は大幅な調整局面に入る可能性があるだろう。

 現在の世界経済は金融主導であることから、原油価格の下落による個人消費へのプラスの影響よりも株価急落による逆資産効果というマイナスの影響のほうがはるかに大きい。これまで「無敵」だった米国の株式市場の不調が続けば、米国経済が来年にも景気後退入りするのではないだろうか。

世界が抱える債務は過去最大に

 欧州経済も心配である。

 英国のメイ首相は、否決される可能性が高いことを理由にEU離脱案の議会採決を来年1月に延期した。だが、事態が好転する見込みは今のところない。英国メディアは、11日に消息筋の話として、「合意のないブレグジット(英国のEU離脱)となった場合、金融機関が混乱するリスクが大きいと英国政府がEUに警告している」と報じた。そのリスクは回避されたわけではなく、来年1月まで先延ばしされたにすぎない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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