原油価格のさらなる下落が招く金融危機の懸念

深刻化する米中貿易戦争、英国のEU離脱が新たな火種に

2018.12.10(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54897
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 市岡氏は「日本のバブル崩壊は日本銀行の利上げと当時の大蔵省の総量規制がきっかけだったが、中国の場合は米国の利上げとトランプ大統領が仕掛けた貿易戦争がその役割を担うのではないか」と分析している。

 中国の金融環境が引き締まった影響は、他のアジア諸国から資金が流出する事態も招いている(11月26日付ロイター)。

 米国の金融市場も変調をきたし始めている。

 12月3日、米国の3年物国債利回りが5年物国債利回りを11年半ぶりに上回った。短期金利は政策金利の動向に影響される一方、長期金利は実体経済のファンダメンタルズを反映すると考えられていることから、短期金利が長期金利を上回ること(逆イールド化)は「ファンダメンタルズの改善を上回る利上げが行われたことにより景気後退が生じる」という解釈が成り立つ。このため「逆イールド」現象を市場関係者は「バブル崩壊のサインではないか」と受け止めたのである。

 リスク回避姿勢が強まったことで、株式などのリスク資産からの資金引き上げのムードが高まっている。その中で、原油価格が急落したことでジャンク債市場も動揺し始めている。

 米国の好調な株式市場を支える要因として、信用スプレッド(10年物国債とジャンク債の利回り差)が拡大していないことが挙げられていた。だが、ここに来てその信用スプレッドが徐々に拡大しつつある。原油市場に比べて堅調に推移している株式市場だが、原油価格の50ドル割れが続けば、株式市場にも悪影響が出る可能性が高いだろう。市場関係者の間では、2008年9月のリーマン・ショックの2カ月前に原油価格が急落した事実が囁かれ始めている。

 原油先物市場におけるヘッジファンドの買越額は、原油価格が1バレル=30ドル割れした2016年初頭の水準にまで縮小している。昨年後半からの米FRBによる量的引き締めの効果が、イラン要因が剥落したことで如実に表れてきており、今後市場では「強気材料」よりも「弱気材料」に反応する傾向が高まることが予想される。

英国のEU離脱が引き起こす金融危機

 筆者は現在の原油市場は2016年初頭と同様、金融要因に大きく影響を受ける状況になっていると考えている。特に、目先で最も心配なのは、12月11日に実施される英国のEU離脱案の議会採決である。

 メイ首相がEUと合意した案は与党でも評判が芳しくないことから、否決される可能性が高い。それによりEUと何の取り決めもないまま来年3月にEUを離脱した場合、中央銀行に当たるイングランド銀行は、「10年前に発生した世界的な金融危機よりも大きな打撃を受けるリスクがあり、来年の経済成長は最大で8%落ち込む」との見方を示している。

 もしこのような事態が発生すれば、世界の金融市場はパニックに陥るのは必至である。
 その際、最も深刻なダメージを受けるのは、10年にわたり続いた超金融緩和の恩恵を受けた「ゾンビ企業」だろう。国際決済銀行(BIS)の9月報告によれば、日本を含む世界12カ国の上場企業4万5000社の財務を分析したところ、インタレストカバレッジレシオ(営業利益割る支払利息)が1未満の企業が全体の12%あり、米国ではジャンク級の企業が過半数を占めているという。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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