原油価格のさらなる下落が招く金融危機の懸念

深刻化する米中貿易戦争、英国のEU離脱が新たな火種に

2018.12.10(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54897
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 米FRBは11月28日に初の金融安定報告を公表し、企業債務リスクに懸念を表明しているが、国際金融市場の不調もあいまって原油価格の50ドル割れが続けばシェール企業の大量倒産が再び生じ、ジャンク債市場とリスク性の高いローン(レバレッジド・ローン)の分野が大混乱する事態が生じかねない。

 このような状況下で、リーマン・ショックの際に問題視された債務担保証券(CDO、サブプライムローンの証券化商品などを多数合成した金融商品)が生まれ変わって復活したようだ(11月22日付ブルームバーグ)。今回はジャンク債とレベレッジドローンを裏付けとしたCDOである。前回のCDOは米国の住宅価格が下落に転じると流動性が枯渇し金融危機の引き金となったが、今回も高い利回りを当てにして投資家が新種のCDOを多数保有することになれば、次の金融危機の火種になる可能性がある。

崖っぷちのサウジアラビア経済

 最後にサウジアラビア情勢である。

 カショギ氏事件以降、ムハンマド皇太子から世界の政治家たちは急速に距離を置き始めたが、民間資本はとうの昔に皇太子の元を離れている(11月27日付ブルームバーグ)。

 JPモルガン・チェースによれば、今年のサウジアラビアからの資金流出額は前年比13%増の900億ドルと同国のGDPの10%に達する見込みである。また、11月末に大手建設会社が200億ドル規模のデフォルトを起こす(11月29日付ブルームバーグ)など、雇用環境はますます悪化している。

 ムハンマド皇太子のG20出席に合わせてサウジアラビアは米国の新型迎撃ミサイルTHAAD購入(総額150億ドル)に合意したが、台所は火の車のままである。同国の外貨準備は、原油価格が上昇したにもかかわらず一向に増加していない(直近のデータでは5040億ドルであり、ピーク時より2400億ドル以上減少しているままである)。

 イエメンへの軍事介入費に加え、ドルペッグ制を採用している通貨リヤル防衛がその要因である考えられるが、このような状況で原油価格が急落したらサウジアラビア経済は「一巻の終わり」になってしまうのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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