原油価格のさらなる下落が招く金融危機の懸念

深刻化する米中貿易戦争、英国のEU離脱が新たな火種に

2018.12.10(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54897
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 昨年(2017年)1月から日量180万バレルの協調減産を実施してきたOPECとロシアだったが、今年5月以降、米国のイランへの制裁が再開し世界の原油供給量が減少する事態に備え増産に舵を切った。

 10月までにイランの生産量は日量約50万バレル減少したが、ロシアの生産量は同約40万バレル、OPECの生産量は同約100万バレル、米国の生産量は同約100万バレル増加した。

 11月には、ロシアの生産量は日量1137万バレルと4万バレル減少したが、米国の生産量は同1170万バレルと過去最高を更新し、サウジアラビアの生産量は前月比65万バレル増の同1130万バレルとなった。3大産油国全体の増勢は止まらない状況である。

 これにより世界の原油市場は日量約200万バレルの供給過剰になり、11月のWTI原油価格の下落率(22%超)は10年ぶりの大きさとなった。

 減産幅が6日の提案を上回ったことからWTI原油価格は一時1バレル=54ドルまで上昇したが、その後「減産が今年半年に生じた産油量の拡大分を相殺できない」との懸念から52ドル近辺まで下落した。

米中貿易戦争の深刻な影響

 需要面に目を転じると、米国との貿易戦争が沈静化しないことから中国経済の不振がますます深刻化している。

 11月末のG20サミットの際に開催された米中首脳会談では「貿易戦争の一時停戦」が成立したかに見えた。しかし、会談当日(12月1日)に中国の大手通信事業会社である華為技術のCFOが米国のイラン制裁に違反した疑いによりカナダで逮捕されたことが明らかになると、「米中対立の深刻化への恐れ」が一段と強まった。

 中国の景況感を示す11月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.0に下落し、景況判断の節目となるラインにまで落ち込んだ。

 市場アナリストの市岡繁男氏によれば、家計部門への貸出が鈍化したことにより住宅や自動車の販売が低調になっていることから、企業向けの貸出が増加している。

 企業向けの大口の貸出先は不動産開発会社だが、高い利回りでの社債発行が常態化し、調達コストの膨張が顕著になっている(11月20日付ロイター)。例えば、中国最大の中国恒大集団は利回り13.75%で18億ドルの社債を発行する事態に追い込まれているが、利回り急上昇の背景には中国不動産市場の冷え込みと米国の金利上昇がある。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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