広大なロシアでも、墓所の不足は深刻な問題になっている。つい最近、モスクワ市とモスクワ州に限っては火葬の割合は5割を超え、伝統的な土葬を追い越した。

 広大さゆえに遺体の搬送も問題である。アフガン戦争の際、兵士の遺体を搬送する「グルズ200」という言葉が多用された。

 グルズとは、重量、貨物の意だ。 この言葉は軍事用語だったが一般に浸透し、現在では単に遺体搬送という意味で使われている。

 筆者の知人はソチの集中治療室で亡くなったため、「グルズ200」でモスクワまで運ばれてくることになっている。

棺の重さが200キロ

 なぜ200かというと、金属性の棺が200キロにもなる、搬送を命じる書類の番号が200番だったなど、諸説ある。

 あえて明るい話題を探すなら、ユニークな墓石だろう。

 シンプルなものから芸術品の域に達しているものまで様々であり、魚釣りが趣味だった人は魚と一緒だったり、ペットと一緒だったりと故人の人となりがうかがえる墓もあり、見ていて楽しい。

 それぞれの墓の大きさもデザインもてんでバラバラだが、個性的で型にはまらないところがロシアらしい。

 ロシアに住んでいると、日常の中に死を意識する瞬間があり、村上春樹の小説「ノルウェイの森」に出てくる「死は生の対極としてではなく その一部として存在している」という有名なフレーズを肌で感じずにはいられない。

 筆者は、最期にまで騙されるのは勘弁であるし、日本まで「グルズ200」の世話になるのも気が進まないので、いくらロシア人に嫌がられても、死後のことについてどこかに書き残しておこうと思う。