土葬にあたっては穴を掘り、棺を地中に下ろす作業をすることになる。筆者が実際に目にしてショックだったのは、出稼ぎ労働者が霊柩車から棺を運び、地中に下ろす際も適当に放り投げていた(筆者にはそう見えた)ことだった。

 力のありそうな男性陣がいるにもかかわらず、彼らは手を貸そうとしない。これは、棺を近親者が運んではいけないという迷信があるためだ。

宗教よりも強い迷信の力

 宗教的には、少なくともロシア正教会はこれを問題視していない。迷信の力は宗教よりも強いのである。

 「リトアール」によれば埋葬作業班の人件費は2万円(4人で作業、出稼ぎ労働者)から20万円(6人で作業、ロシア人)と幅がある。

 最新のトレンドになっているのは、棺専用リフトだ。これを使えば不注意な作業員に棺を落っことされることもなく、迷信深い親戚に文句を言われることもないが、使用料は高く、通常30万円を超える。

 さらなる問題は、台頭している悪徳業者だ。

 葬送ビジネスは届出制で誰でも参入できる。筆者の知人も、母親が亡くなった直後に悪徳業者から電話がかかってきて、言われるままに70万円を払ってしまった。

 「なぜ市のホームページを見なかったのか?」という問いに対して彼は首をかしげ「パニックになって電話の主の言いなりになってしまった。でも、埋葬できたこと自体に満足している」と話した。

 普段は振り込め詐欺に気づくなど注意深い人なのだが、このときばかりは冷静な判断ができなかったようだ。

 ロシアの経済紙「RBK」は、業界内部の話として、全体の6割がブラック業者だと報じている。