イランの原油生産量は本当に大幅減少するのか

米国の経済制裁に従わないイラン産原油の大口購入先

2018.06.08(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53265
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 ポンペイオ米国務長官が4月28日にリヤド訪問した際、ムハンマド皇太子が会見しなかったことから「ムハンマド皇太子に異変が生じた」との疑念が生まれ、5月下旬にナイフ前皇太子が「ムハンマド皇太子が4月21日の銃撃より負傷した」とツイッターしたことで死亡説まで伝えられていた。「ムハンマド皇太子が公務に復帰して万事一件落着」としたいところだが、そうは問屋が卸さない。

 サウジアラビア政府は6月2日に大幅な内閣改造を行った。注目すべきはムハンマド皇太子が実権を握るようになってからの3年間で3人目の労働・社会発展相が任命されたことである。新たに労働・社会発展相となったアルラジ氏は、エンジニアでビジネスマンの経験があり、サウジの金融部門に大きな影響を持つ一族出身である。

 経済界のプリンスであるアルラジ氏にとっての喫緊の課題は、2人の前任者と同様に失業率の低下である。サウジアラビアの現在の失業率は12.8%であり、低下に転じる兆しが見えない。財政上の制約から雇用創出支援経費が削減されているため、失業率はむしろ高まる可能性が高い。さらにムハンマド皇太子の改革により女性の社会進出が始まれば、男性の失業者が増加するのは間違いないだろう。

 政情が比較的安定しているとされてきたヨルダンで、5月末から増税に反対する大規模デモが発生、その責任を取って首相が辞任に追い込まれる騒動になっている。サウジアラビアにとっても「他山の石」ではない。

カタールと断交継続、ドイツとも関係悪化

 対外に目を転ずれば、イエメンの暫定政府軍が、サウジアラビアなどの支援を受けて、イエメン西部の「ホデイダ港」の奪還作戦を実施したが、大失敗に終わった(6月2日付AFP)。ホデイダ港は、イエメンのシーア派反政府武装組織フーシに占拠されている。フーシはこの港を、紅海を通航するタンカー(サウジアラビア産原油を積み込む)へのロケット攻撃の拠点としているのだ。ホデイダ港はイエメン向けの支援物資の7割が経由する拠点でもあることから、暫定政府軍は背水の陣で臨んだが、フーシ派の待ち伏せ攻撃に遭い、100人以上が死亡したという。

 イエメン情勢が泥沼化する中で、同国で活動する国際テロ組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」は6月1日、「サウジアラビアで改革を進めるムハンマド皇太子の改革は罪深い」と警告を発した。AQAPはサウジアラビアのイエメンへの軍事介入で生じた政情不安を糧にして勢力を拡大したが、ムハンマド皇太子はシーア派に加えスンニ派の武装組織まで敵に回してしまったようだ。

 カタールとの関係も好転する兆しが見えない。サウジアラビア政府が「イランに接近している」と非難してカタールと断交してから1年が経過したが、カタールはイランやトルコとの関係を強化したことでサウジアラビアなどに依存しなくて済む体制を確立したことから、対立が長期化する様相を呈している。このような事態に焦ったのか、サウジアラビア政府は6月1日、「カタールがロシアから最新鋭の高性能地対空ミサイルシステム『S-400』を入手した場合、カタールに対する軍事攻撃も辞さない」と警告を発した(6月1日付仏ルモンド)。ルモンドによれば、サウジアラビア政府はマクロン大統領に対し「カタール・ロシア間のS-400を巡る交渉を阻止するために介入してほしい」と書簡で訴えたという。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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