イランの原油生産量は本当に大幅減少するのか

米国の経済制裁に従わないイラン産原油の大口購入先

2018.06.08(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53265
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 フランスとは対照的に、ドイツとの関係は悪化し続けている。5月25日、サルマン国王は「今後、政府事業についてドイツ企業を新規契約先として選定することを禁止する」勅令を発した。2013年にドイツに亡命したサウジアラビアの王子が、5月下旬に「サルマン国王やムハンマド皇太子に対し反旗を翻せ」とのビデオメッセージをSNSに流した(5月24日付ZeroHedge)。この動きを黙認したドイツ政府に対するサウジアラビア側の苛立ちがその背景にあるのだろう。

購入され続けるイラン産原油

 OPEC総会は6月22日に開催されるが、内憂外患のサウジアラビア政府にとって「喉から手が出る」ほど欲しいのが原油売却代金である。増産に転ずれば原油価格が下落するリスクがあるが、このまま手をこまねいていれば世界市場を米国産原油に席巻されてしまう。ジレンマに陥るOPECにとって「頼みの綱」は、米国の経済制裁によるイランの原油生産量の大幅減少である。

 だが、米国政府がイラン核合意から離脱した5月の原油輸出量は日量240万バレルとなり、過去1年間の平均(日量212万バレル)を上回っている。海運業界関係者によれば「イラン産原油の購入を大幅に削減する動きは見られない」という(6月4日付OILPRICE)。実際にイラン産原油の大口購入先である中国やインド企業は米国による対イラン制裁に従わない方針を示しており、欧州でも、スペインの石油大手レプソルがスポットで50万バレルのイラン産原油を購入することを決定している(6月4日付OILPRICE)。

 米国の制裁が全面的に発効するのは今年(2018年)11月であり予断が許さない状況であるが(イラン政府は5日、ウラン濃縮能力を拡大する計画に着手すると宣言)、今年末までにイランの原油生産量が2012年時のように日量100万バレル減少する可能性は低い。減少したとしてもせいぜい同10万~20万バレル程度ではないだろうか。20万バレル程度の減産であれば、リビアの政情が安定し原油生産量が今後回復することが見込まれることから、OPEC全体の生産量に影響を与えない可能性がある。

 OPECは2008年のリーマンショック後に大幅な減産を実施し原油価格を回復させたが、その後、高油価を招き需要が大きく減少した。にもかかわらずOPECはイスラム国の台頭という地政学リスクに配慮して2014年6月の総会で増産を決定。米FRBの量的緩和(QE)の停止もあいまって同年末にかけて原油価格は大幅に下落した。

 現在、原油市場では、2018年に入ってからのシェールオイルの大増産による供給過剰効果が表れ始めている。6月の総会で、米国の増産要請などイランを巡る地政学リスクに考慮して主要産油国が減産緩和に踏み切れば、原油価格は秋にかけて再び大幅下落するのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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