イランの原油生産量は本当に大幅減少するのか

米国の経済制裁に従わないイラン産原油の大口購入先

2018.06.08(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53265
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 米国ではメモリアルデーが過ぎドライブシーズンが始まりつつあるが、最近の原油価格の上昇でガソリン需要が打撃を受けつつある。民間調査によれば「24%の米国人が今夏のドライブの回数を減らす」と回答しているという。この減少幅は原油価格が1バレル=100ドル台だった2014年夏以来のことである(5月22日付ZeroHedge)。

 主要産油国の減産緩和の観測により、その指標価格である北海ブレント原油先物価格も下落したが、米WTI原油価格は米国内の事情が災いして北海ブレント原油価格の2倍を上回る下落幅を記録した。これにより5月31日、北海ブレント原油価格と米WTI原油価格との差が3年超ぶりに拡大し(1バレル当たり11ドルを突破)、安値を武器にした米国産原油の輸出拡大は破竹の勢いである。現在の輸出規模は日量200万バレルをコンスタントに超えているが、「近い将来日量350万~400万バレルの規模に達する」と予測する専門家もいる(5月29日付OILPRICE)。

 最近の原油高で経済状況が悪化している発展途上国にとって、安価な米国産原油は「干天の慈雨」である。原油需要が最も伸びているアジア地域では、中国最大の国有石油精製会社シノペック(Sinopec)が6月からサウジアラビアからの原油輸入を4割カットし、米国産原油に切り替えることを決定した(5月28日付OILPRICE)。インドも安値の原油の確保に奔走している(「仮想通貨ペトロで決済すれば3割安で原油を輸出する」というベネズエラ政府の提案は受け入れなかったが・・)。中東産原油に加えて西アフリカ産原油もアジア地域でのシェアを落としている(5月30日付OILPRICE)。

相変わらず不安定なサウジアラビアの政情

 北海ブレント原油価格が米WTI原油価格に比べて高止まりしているのは、減産効果に加えて中東地域の地政学リスクも貢献している。特に、筆者がウオッチしているサウジアラビア情勢は一向に安定する気配が見えない。

 サウジアラビア政府は6月4日から女性に対する運転免許証の交付を開始した。サウジアラビアはこれまで世界で唯一女性の運転が認められていなかったが、次期国王と目されるムハンマド皇太子主導の改革の一環で、6月24日から女性の運転が解禁される予定だ。だが、5月下旬に拘束された女性活動家(女性の運転する権利などを求める)の多くがいまだ自由の身となっておらず、女性の間からムハンマド皇太子に対する疑念の声が上がり始めている。

 そのムハンマド皇太子は、4月21日以降、公の場に姿を見せてこなかったが、5月31日、「イエメンのハディ大統領と起立して握手する」写真が公開された。ムハンマド皇太子はその後、英国のメイ首相と電話会談したという(6月3日付ロイター)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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