金融市場に暗雲を漂わせる原油高

実体経済の悪化から金融システムへの脅威へ

2018.04.27(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52958
  • 著者プロフィール&コラム概要

 2015年末に解禁された米国産原油の輸出は昨年から今年にかけて急増し、日量200万バレルを超える水準となっている。前年比の増加幅は日量100万バレルを超え、新規の輸出先の太宗(たいそう)を中国をはじめとするアジア諸国が占めている。OECD加盟国の米国から非加盟のアジア諸国(中国やインドなど)に原油が輸出されれば、OECD内で原油需給が改善しなくても、世界の原油在庫を代表するとされるOECDの原油在庫が見かけ上減少することになるからだ。この傾向はさらに強まるだろう。中国の3月の原油輸入量は日量922万バレルとなり、過去2番目の水準となった(過去最高は今年1月の同957万バレル)。

 中国では、新エネルギー車の導入拡大や産業構造の転換などで国内の石油市場が供給過剰状態となり、原油在庫の増加が常態化しているが、原油輸入量は減少するどころか増加し続けている。その要因は中国国内の原油生産量の減少である。2014年後半以降の原油安で日量400万バレルの水準を下回ったが、採算ラインである1バレル=60ドルの水準に原油価格が回復しても、生産量が一向に上昇する兆しがない(今年第1四半期の生産量も前年比2%の減少だった)。大慶や勝利など中国の経済発展を支えてきた大油田が老朽化し、生産コストは想定以上に割高になっていることから、中国産原油と品質が近く、米国内の供給過剰で割安となったシェールオイルへと購入先をシフトした可能性が高いのである。

OPECの戦略に風穴を空けるイラン

 足元の需給逼迫感から原油価格は上昇しているが、1バレル=70ドルになれば需要への悪影響から下落するとの見方も出始めている。JPモルガンは4月16日、「原油価格は1バレル=70ドルを超えることはない」との見方を示した。また、国際通貨基金(IMF)も4月18日「原油価格は来年までに1バレル=60ドル割れするだろう」との予測を公表した。

 他方、ゴールドマンサックスは「原油高でも世界の原油需要が堅調に推移する」と述べるが、これに中東地域のリスクプレミアムが加味されているのは言うまでもない。

 地政学リスクで現在最も注目を集めているのはイランである。

「シリアのアサド政権が化学兵器を使用した」ことを理由に4月14日に米国がシリアへの軍事攻撃を実施した。米国の攻撃は抑制的だったが、その後「9日にイスラエル空軍がシリア領内のイラン革命防衛隊の基地を攻撃した」ことが明らかになったことで、「イスラエルとイランが軍事衝突するのではないか」との懸念が高まっている。

2
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ