原油価格70ドルが生命線、苦境のサウジの秘策とは

“あの新技術”に白羽の矢、国内の軍需産業育成も急務

2018.03.02(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52468
  • 著者プロフィール&コラム概要

 サウジアラビア通貨庁(中央銀行に相当)は2月15日、国際決済でブロックチェーン技術を試験的に利用するため、米国企業リップルと契約したことを明らかにした。リップルによれば、これにより国際決済の透明性が高まるという。こうした試験的プログラムを一国の中央銀行が立ち上げるのは初めてである。サウジアラビア通貨庁は昨年ブロックチェーン技術に懐疑的な見方を示していたが、今回の汚職捜査に基づく海外資金の回収に失敗したことから、「新兵器」の導入に踏み切らざるを得なかったのだろうか。

米国がサウジへの原発輸出に名乗り

「新兵器」と言えば、サウジアラビア政府にとって、国内の軍需産業育成も脱石油依存の重要な柱である。

 サウジアラビアは国内の石油資源節約との観点から、原子力発電の導入準備を進めている。今後25年間で16基の原子力発電所を建設する計画である(総事業規模は800億ドル以上)。既に10カ国との間で導入に向けての交渉に入っている(3月に最初の入札を行う予定)が、最近になって米国政府も交渉相手として名乗りを上げた(米国のペリー・エネルギー庁長官は3月2日にロンドンでサウジアラビア高官と協議を行うことになっている)。

 注目すべきは「米国ファースト」を掲げるトランプ政権が、自国の原子力産業を支援するために、核拡散防止条約(NPT)上の規制を緩めてでも(国内でのウラン濃縮や再処理を認める)サウジアラビアへの原発輸出を実現させようとしていることである。これが実現すれば、イランの核合意に不満を持つサウジアラビア政府が核兵器を自前で開発する途が開かれる可能性が出てくる(2月22日付ZeroHedge)。

 サルマン国王は2月26日、参謀総長を含む多数の幹部を解任する大規模な軍組織改革を実施した。軍改革の公式な理由は公表されていないが、「組織を若返りさせてイランやシリア、イエメンへの軍事的圧力を強めたい」とするムハンマド皇太子の意図が反映されたものであるとされている(2月27日付ブルームバーグ)。

 このようにサウジアラビアを巡る内外の地政学リスクが高まれば、原油価格が1バレル=70ドル以上になるのは容易だが、この意図せざる「秘策」がサウジアラビア自身にとって望ましいかどうかは分からない。

5
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ