原油価格70ドルが生命線、苦境のサウジの秘策とは

“あの新技術”に白羽の矢、国内の軍需産業育成も急務

2018.03.02(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52468
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 コモディティ市場ではコンピューターを駆使したアルゴリズム取引や超高速取引が急速に広がっており(2月12日付ロイター)、「原油価格が1バレル=59ドルを下回るとコンピューターによる売りが拡大し原油安が一気に加速する」との懸念が出始めている(2月19日付日本経済新聞)。2014年後半の「逆オイルショック」の再来である。

サウジアラビアの深刻な経済停滞

 市場関係者の注目が集まる中、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は21日、「小規模な供給不足が生じるとしても、産油国は年内は減産を継続すべきだ。原油市場のバランスは若干失われても良い」という注目すべき発言を行った(2月21日付ブルームバーグ)。サウジアラビアは数十年にわたりOPEC内の穏健派(ハト派)の代弁者としてベネズエラやイランなどの原油価格押し上げ要請(タカ派)に抵抗してきたが、ここに来て「タカ派」に同調する姿勢を示したのである。

 サウジアラビアが置かれている経済環境はかつてなく厳しい。サウジアラビアの財政維持には1バレル=70ドル以上の原油価格が不可欠とされており、現在の同60ドル台の水準では満足できる状況にない(2月19日付OILPRICE)。

 ムハンマド皇太子は経済の脱石油依存を果たすため、「ビジョン2030」と呼ばれる大改革に着手している。しかし、ビジョン2030が実現するかどうかは国営石油会社サウジアラムコのIPO(新規株式公開)の成功にかかっていると言っても過言ではない。

 また、サウジアラビア政府が今年になって力を入れているのが娯楽分野である。2月に入りサウジアラビアでは「初の国際マラソン開催」や「初のオペラ公演」などが目白押しだ。政府は今年フェスティバルやコンサートを前年比2倍の約5000件開催し、今後10年間に娯楽分野に640億ドルの資金を投じることを発表した。女性の社会進出をはじめとする大幅な社会改革が進んでいる観があるが、ムハンマド皇太子に「牙」を抜かれた「勧善懲悪委員会(宗教警察)」など保守派の不満が経済停滞などをきっかけに一気に爆発する危険は高まるばかりである。

 一方で、経済成長の最も重要なファクターである国内の投資活動は、昨年11月からの大規模な汚職摘発騒動による悪影響をもろに受けて低調なままである(2月20日付ロイター)。サウジアラビア政府は1月に国内の企業幹部と会談し、「摘発はほぼ終わり今後は安心して事業を行える」と説明した。だが、取り締まりのプロセスが秘密に包まれたままでは「拘束が政治的動機に基づく」という投資家の疑念が晴れるわけがない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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