地域エネルギー事業で地元にお金を回せるか?

地域経済効果を高めるための事業形態とは

2018.03.09(金) 小川 祐貴,稲垣 憲治
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52416
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再生可能エネルギーによるお金の地域内循環

 まず、海外からの化石燃料を地域主導での再生可能エネルギーに置き換えることで、「(1)電力調達料金」が地域に循環するようになります。

 ここで、再生可能エネルギーに置き換えれば、「(1)電力調達料金」の全てが地域に循環するかといえばそうではありません。例えば、メガソーラーによる発電事業を行うためには、まず発電設備(太陽光パネルなど)を購入・設置しなくてはなりません。発電設備を生産している地域は国内でも限られ、海外から輸入することも珍しくありませんので、これらの費用は地域から出ていくことになります。

 一方、設備の設置を地域の事業者が担うことで、これらの経費が地域内で循環することになります。また、発電設備の維持・管理(O&M)を地域の事業者が担うことでも、地域内でのお金の循環を増やすことができます。なお、このO&M部分には、機器のメンテナンスの他、バイオマス発電における燃料の調達なども含まれます。

 このように再エネ事業のキャッシュフローを出発点として、お金の流れが誰に帰属するのかを積み上げ、典型的なメガソーラー事業の地域経済効果(=地域の利益*1)を推計してみると、下図のようになります*2

 ここで注目すべきは、再エネ事業者の純利益が地域経済効果の最も大きな割合を占めていることです。地域の事業者や住民が自ら投資し、再エネ事業を地域で所有することで、より多くの地域経済効果を実現することができるのです。

メガソーラーの地域経済効果(建設時+運転期間20年の累積)

*1:ここでの地域経済効果は「地域経済付加価値」(=「地域内企業の純利益」+「地域内居住従業員の可処分所得」+「地方税」)という指標を用いています。この指標は、ドイツの研究機関が開発したものを日本に応用したものです。ドイツでは、この指標を用いて、自治体における事業の効果測定などが行われています。なお、よく耳にする一般的な「経済効果」は、新規需要を満たすために連鎖的に誘発される「生産額の合計」を産業連関表を用いて算出するもので、地域の利益を表す本研究の指標とは異なります。

*2:設備の維持・管理は全て地域内の事業者に発注する、再エネ事業や維持管理業者の従業員は全て地域内に居住している、と想定して試算。

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小川 祐貴

(おがわ・ゆうき) 平成30年3月京都大学大学院地球環境学舎博士課程修了。博士(地球環境学)。京都大学「再エネ大量導入を前提とした分散型電力システムの設計と地域的な経済波及効果に関する研究プロジェクト」にて、地域主体が自らエネルギー事業に参入することが、地域にとってどのような経済的メリットがあるのかを定量的に示す「地域付加価値創造分析」に取り組む。株式会社イー・コンザル研究員として自治体のエネルギー・環境政策の策定支援にも関わる。
 

稲垣 憲治

(いながき・けんじ) 文部科学省原子力計画課などを経て、現在、東京都庁環境局職員。5か国10都市で先進都市の再生可能エネルギー普及策を現地調査。環境・エネルギーへの思いが高じて業務時間外に京都大学プロジェクト研究員としても活動中。自宅の電気は、もちろん再生可能エネルギー(FIT)率の高い電気を使用。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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