彼がストリップ業界に入るきっかけは、姉からもたらされた。男勝りな性格で、甥や姪から「オジン」と呼ばれた姉は、「桐かおる」という超一流のストリッパーだった。親分肌の姉に逆らうという選択肢をもたなかった瀧口はある日、職場にかかってきた1本の電話によって運命を変えられることになる。

「劇場の経理をやれ」

 有無を言わさぬ姉の一言によって、長年勤めた銀行をあっさりと辞めた瀧口は、その後ストリップ業界においてなくてはならない存在となっていく。高卒という理由だけで出世の先が見えていた銀行よりも、何があるか分からないストリップ業界のほうが肌に合っていたのだろう。瀧口には迷いがない。こうあるべしと思ったことを、次々と形にしていく。確信を持って「法」の外側で生きていると考えている彼に、タブーは数えるぐらいしかない。

業界の衰退は止められない

 読みどころは、そんな有能な彼でもストリップ界の凋落を止められなかったという事実だ。昭和の時代、ストリップ劇場は、米軍基地や駐屯地があった場所の近くで発展し、隆盛を極め、そして激減してしまった。前述した「長町デラックス劇場」も今はもうなくなってしまったという。時代によって求められ、過当競争によって淘汰され、規制の流れの中でひっそりと幕を閉じていく。すべてのものが、そのサイクルから逃れることはできない虚しさ。それはつまり、働く人々が一人、また一人と業界を去っていくことでもある。残された「帝王」は、著者に向かって過去の栄光を淡々と語る。

 本書の後半に描かれる瀧口の晩年の日々は、華やかさとは縁遠いものだ。現代の日本において何かしらの職業に就く人は、少なからず自分の業界や人生に重ねて読んでしまうだろう。栄枯盛衰。盛者必衰。右肩が下がった日本という国。

 成功者と、それ以外の人との間にどれほどの差異があるだろうか。他者からの評価を自分の人生に組み込むバカらしさ。それは自分を生きるという、人生の本質から離れる行為だ。絶対的な価値基準をもつ者の人生を知ることが、明日の自分へ新たなる活力をもたらしてくれる。本書を読むことで手に入れられる未来が、きっとあるだろう。