●しかし、目に見えない軍事行動は常に遂行中である

 米軍は、今回は目立った軍事行動をとらないであろうが、米軍は、常に目に見えない重要な作戦を実施している。

 つまり、米軍はこの瞬間も、将来の作戦に備えたISR(情報・監視・偵察)活動を行っている。金正恩委員長の動向(居場所、通信状況など)、重要な軍事施設(核関連施設、ミサイル開発施設、陸・海・空軍施設など)、各軍隊の動向などを継続的に情報収集・分析・評価し、将来の作戦遂行に備えている。

 また、さらに重要な作戦は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を失敗させる米軍の「発射前(left-of-launch)」作戦であるが、日本では馴染みのない表現の作戦なので説明する。

●米軍の「発射前(left-of-launch)」作戦が北朝鮮のミサイル発射失敗の原因の1つ?

 北朝鮮のミサイル発射における失敗確率が高いと思う方が多いと思う。北朝鮮のミサイル開発・製造技術が低いことも理由の1つであるが、米軍が実施する「発射前」対処の成果の可能性がある。

 例えば、北朝鮮のムスダン(中距離弾道ミサイル)の失敗率はなんと88%であるが、ムスダンを構成するソ連製のミサイルのソ連時代の失敗率は13%であった。この圧倒的な差は米軍による「発射前」作戦の成果かもしれない。

 米軍が考えている弾道ミサイル対処の1つとして、「発射前(left-of-launch)」対処と「発射後(right-of-launch)」対処という考え方がある。

 ミサイル発射を時系列でみると、発射時点を中心として左が「発射前」、右が「発射後」になるのでこのような名称になっている。我が国では、left-of-launchを「発射の残骸」と訳している人*2がいるが、明らかに誤訳である。

 まず、「発射後」対処は自衛隊も実施しているもので、イージス艦から発射される「SM-3」や地上配備の「PAC-3」などの運動エネルギー兵器で弾道ミサイルを破壊することである。

 周知のとおりSM-3やPAC-3は高額で対処も難しい。もっと安価に、より効率的に、より確実に相手のミサイルを無効化できないかという問題意識で「発射前」対処が考えられた。

 「発射前」対処は、相手の弾道ミサイルが発射台を離れる直前までにミサイルを無効化することを狙いとする。

 ミサイルが発射される前や発射台にまだ存在する時期はミサイルの弱点であり、この弱点を呈する時期にミサイルを無効化できれば最善である。

 しかし、この「発射前」対処は目に見えない作戦で派手さはないが効果的な作戦であり、米軍は極秘裏に行っている可能性がある。

*2=長谷川幸洋、「トランプ政権が画策する対北朝鮮「静かなる先制攻撃」の全容」、現代ビジネス